南アフリカ・ズマ大統領の辞任がもつ意味──経済停滞でアフリカに広がる「失脚の連鎖」

大統領辞任を発表したズマ(2月14日)。もとは庶民派だったが最後は庶民に憎まれた Siphiwe Sibeko-REUTERS
南アフリカは2010年のサッカー、ワールドカップをアフリカ大陸で初めて開催したことからも分かるように、アフリカ屈指の新興国。この国で2月15日、ジェイコブ・ズマ大統領が辞任。汚職の蔓延などに、与党からも批判が高まるなかでの辞任劇でした。
南アフリカはアフリカを代表する大国であるだけでなく、報道の自由や民主的な制度の発達した国でもあります。それだけに、ズマ辞任はアフリカ全体の不安定化を象徴します。実際、大統領辞任の動きは南アフリカだけにとどまりません。
アフリカは2000年代から資源ブームに乗って好調な経済成長を実現させてきました。しかし、経済停滞を背景に広がる政治的な不安定化は「アフリカブーム」の一つの曲がり角を示すといえます。
その男、ズマ
南アフリカではかつて白人が政治・経済の全てを握り、黒人など有色人種は居住・移動をはじめ、あらゆる権利が制限される「人種隔離政策(アパルトヘイト)」が実施されていました。国連などによる経済制裁もあり、アパルトヘイト体制は1993年の憲法改正で正式に廃止。翌1994年、全人種が参加する初の選挙で、反アパルトヘイト運動を指導したアフリカ民族会議(ANC)のネルソン・マンデラ(任1994-1999)を大統領とする政府が発足したのです。
圧倒的なカリスマ性をもって国民を指導したマンデラ氏の引退を受けて第二代大統領となったタボ・ムベキ(1999-2008)は、英国留学経験者らしくいかにもエリート臭が漂う点で、低所得層から不人気でした。これに対して、2009年に就任したズマ氏は、同国の憲法で禁止されている一夫多妻の実践を公言するなど、よく言えば庶民的、悪く言えば品のない言動が持ち味で、低所得層や労働組合を支持基盤としました。
一方、ズマ氏には大統領就任前から、汚職や権力濫用の噂が絶えませんでした。それに加えて、ムベキ氏が米英など欧米諸国との関係を深め、新自由主義的な規制緩和などを推進したのに対して、ズマ氏は中国と接近。国家によって主導される中国式の市場経済への転換を進めました。
世界最高の不平等社会
ところが、その後の南アでは経済成長の一方で格差が拡大。不平等度を表すジニ係数は2011年段階で63.4(世界銀行データベース)。これは米国(41.0、2011年)や中国(42.2、2012年)を大きく上回り、地主制が残っているために格差の大きさでは世界屈指のラテンアメリカのブラジル(53.1、2011年)やチリ(47.6、2011年)をも凌ぐ、世界最高水準です。
この背景のもと、2012年10月に南アフリカでは、英国企業が保有するプラチナ鉱山でストライキが発生。賃金上昇が物価上昇についていかないことに不満を募らせた労働者による違法ストライキは、警官隊の発砲で34名の死者を出す事態に至りました。これを機にストライキは全土に波及。南アフリカに進出していたトヨタなど日本の自動車メーカーも、操業の一時停止を余儀なくされたのです。
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