コラム

米中「電撃」合意...トランプ関税に振り回された株価はどこまで戻るのか

2025年05月13日(火)09時40分

実際に、「貿易赤字=相手国から搾取されている」というのはトランプ大統領らの幻想に過ぎない。トランプ氏がこの考えを変えるとは思えないが、関税率をディールの材料として使うだけであれば、経済全体を失速させる可能性は低い。

筆者は、「自傷的な高関税政策」は持続不可能なので、経済活動の急減速が明らかになる夏場にかけて政策が大きく修正される、と予想してきた。実際には、経済活動の減速を予見して関税政策を修正しつつあるようで、予想外に事態が急速に動いたということになる。

米経済は緩やかな減速局面へ

これまでのところ、高関税政策が始まる中で、米国経済が引き続き底堅く成長していることを示す経済指標が5月初旬まで続いていた。関税引き上げ前に在庫を確保する動きが続いていることが、経済指標を押し上げているとみられる。今後発表される経済指標では、その反動減もあり大幅な経済活動の減速が示されるだろう。経済活動の減速は労働市場の調整をもたらし、低水準だった失業率の上昇が早晩始まる、と筆者は予想している。

一方、FRB(米連邦制度準備理事会)による利下げあるいは減税政策の発動によって、米国経済は揺るがないとの期待も根強いが、どうだろうか。

まず、パウエル議長は、トランプ大統領から口撃を受けても予防的な利下げを行わない姿勢を明確にしている。現在のインフレ環境を踏まえれば、そうした判断は妥当であり、利下げは経済指標の悪化が起きてから始まるだろう。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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