コラム

米中「電撃」合意...トランプ関税に振り回された株価はどこまで戻るのか

2025年05月13日(火)09時40分
ジェイミーソン・グリア米通商代表部代表(左)とスコット・ベッセント米財務長官

電撃的な合意に至った米中協議後、記者会見を行うジェイミーソン・グリア米通商代表部代表(左)とスコット・ベッセント米財務長官(スイス・ジュネーブ、5月12日)

<株式市場が「関税戦争」の鎮静化を期待して上昇している。米中が90日間の関税引き下げで合意したというニュースも飛び込んできた。今後の見通しは?>

4月2日の相互関税発表で急落した米株市場は、その後反発を続け、5月9日時点で下落分をほぼ穴埋めした。日本株(TOPIX)も、3月末以来の水準まで上昇している。株式市場の反発は、トランプ米政権が関税交渉を進める中で今後、関税賦課率が早期に低下するとの期待が主たる理由となっている。

5月8日には英国との関税交渉が妥結し、対米への輸出自動車の関税率が10%に引き下げられ、トランプ流の関税ディールが進捗した。

さらに5月12日は、米中の間で貿易活動が事実上止まることを意味していた100%を超える関税率が、90日の期間限定ではあるが、3月時点の水準まで一気に引き下げられた。この合意を受けて、米株市場は同日に3%を超える急騰となった。

相互関税の経済活動へのダメージは米国にとって大きく「自傷的な政策」であることを、株価の急落を受けてトランプ大統領はとりあえず理解した、ということだろう。ベッセント財務長官は、「公正貿易への見解の違いに対し報復措置の応酬をすることには、両国ともに興味がないという結論に達した」と述べた。

中国との交渉が3月時点に戻ったとうことであれば、欧州や日本からの自動車などの25%の関税率なども、交渉を経てある程度引き下げられるだろう。トランプ政権がこのまま「自傷的な」政策を行わないのであれば、米経済が急減速するリスクは相当低下する。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECBは景気停滞対応へ利下げ再開を、イタリア予算案

ワールド

ガザ支援船、イスラエル軍が残る1隻も拿捕

ビジネス

世界食糧価格指数、9月は下落 砂糖や乳製品が下落

ワールド

ドローン目撃で一時閉鎖、独ミュンヘン空港 州首相「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 7
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story