コラム

トランプ政権の迷走で高まる「世界不況」リスク...日本が取るべき金融財政政策とは?

2025年04月29日(火)11時15分

外圧は経済政策を転換する絶好の機会になりうる

持続的な経済成長が実現しない中で、トランプ政権の政策によって外部環境も大きく変わったため、追加利上げを正当化することは難しい。

先に述べたとおりドル安への思惑がくすぶる中で、仮に日銀が曖昧な中立金利を目指して利上げを強行すれば大きく円高が進み、引き締め政策が強まる。このためトランプ政権の経済政策が大きく転換しない限り、政策金利は据え置かれるだろう。

実際のところ、利上げを模索する日銀が、利下げに転じるにはかなり距離があり、金融政策は現状維持が続きそうだ。

一方、4月15日コラム(「増税原理主義者を打破する機会」トランプ関税は日本の国難、だが災い転じて福となすかもしれない)でも述べたが、貿易交渉、関税問題という外圧は、実は経済成長を高める経済政策へ転換する絶好の機会になりうる。財政政策によって経済成長を高めることが可能だし、保護されている農産業の輸出競争力を強める対応もできるだろう。

ただ、石破政権は、ガソリン補助金の継続など小手先の対応に終始しそうで、経済政策が転換する可能性はやはり低い。結局、トランプ政権との交渉に振り回されるのが精一杯になるのではないか。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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