最新記事
オピニオン

動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由

China's Ready for a Trade War. The U.S. Isn't. Here's Why | Opinion

2025年4月13日(日)13時50分
イムラン・ハリド(戦略地政学アナリスト)
スペインのペドロ・サンチェス首相、中国の習近平国家主席

訪中したスペインのペドロ・サンチェス首相(左)と話し合う中国の習近平国家主席(4月11日、北京) ANDRES MARTINEZ CASARES/Pool via REUTERS

<トランプは各国に課した相互関税を90日間停止すると発表したが、中国に対してはその限りではない。米中貿易戦争が始まりそうな様相を呈しているが、中国はもうかつての中国ではなく、アメリカには「不都合な真実」がある>

ドナルド・トランプ米大統領は4月9日、中国からの輸入品に合計145%の追加関税を課すと発表した。第1次政権時に開始した対中貿易戦争を継続、加速させた格好になる。だが今回は状況が大きく異なり、中国の対応は米政府の予想を超えている。

中国政府に動揺は見られず、代わりに戦略的な対応が取られた。中国は当初、報復関税で応戦するのではなく、標的を絞った対抗策に出た(編集部注:4月11日には中国も、アメリカからの輸入品に対する関税を合計125%に引き上げると表明。ただし、アメリカが今後さらに追加関税を引き上げても相手にしないとしている)。

標的を絞った対抗策とは、アメリカの農業輸出150億ドル相当を狙い撃ちにしたものだ。共和党の地盤を直撃する形で、ちょうど種まきの時期に経済的打撃を与えた。このタイミングは、すでに困難に直面している農家の不安をさらに深めるものとなった。

今回の「消耗戦」で、中国は単なる報復にとどまらず、対応を進化させている。

2018年にトランプ関税戦争の第1幕が始まって以降、中国は輸入構造を見直し、ブラジルやロシアからの輸入を増やしてきた。かつてアメリカ産農産物は中国市場の40%を占めていたが、現在は20%を下回っている。代わってブラジルとロシアが、中国の需要をより政治的な縛りが少ない形で満たしている。

農業貿易は「変化」の一部にすぎない。中国はレアメタル市場における支配力を外交手段として使い始めている。半導体、EV、防衛機器に不可欠な鉱物資源の輸出制限だ。これらは単なる対抗措置ではなく、長期的な視点で積み上げてきた戦略的再構築の一部を成す。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中