コラム

トランプ政権の迷走で高まる「世界不況」リスク...日本が取るべき金融財政政策とは?

2025年04月29日(火)11時15分

他国はドル安・株安が続くリスクに身構えるべき

こうした中で、4月22日にトランプ大統領が「パウエル議長を解任するつもりはない」と発言を一転させたことで、株安とドル資産売りは反転した。さらに、大幅に引き上げた中国に対する関税を引き下げる考えをトランプ氏は示したが、これらは株価下落など金融市場からの圧力に配慮したのだろう。

今後も様々な発言で金融市場に対して配慮しながらも、大幅な関税政策などの、自傷的な経済政策を掲げるトランプ政権の迷走は当面続きそうである。

とはいえ、株式市場を下落させないために極端な政策は修正されるとの期待は根強いが、経済政策の根幹は大きく変わらないのではないか。世界経済が不況に至り、ドル安そして株安が続くリスクに身構えるべきだろう。

そして、トランプ政権の経済政策の迷走は、日本を含めた他国にも大きな影響を及ぼす。言うまでもないが、経済成長への下振れリスクが高まっているのだから、他国もそれに応じた金融財政政策を行うことが必要になる。

日本では日本銀行が2024年7月から利上げを続けており、株式市場を急落させるなど相当の「引き締め」となっている。そもそも、2024年には経済成長にブレーキがかかっており、利上げ継続の根拠は弱い。2025年1-3月のGDP成長率はほぼゼロ成長の停滞が示される、と筆者は試算している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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