コラム

石破政権「金融緩和に反対」姿勢は続く? 日本経済が「ねっとりした」成長になりそうな理由

2024年10月02日(水)17時00分

増税撤回が実現すれば家計の所得が底上げされて、個人消費の持続的な回復をもたらし、そうなれば石破政権は世論の支持を得ることができるだろう。

ただ、一方で石破氏は、「地方創生」を重視しており、地方や農業などへの分配政策を強化するとみられ、最終的には増税政策が志向されるだろう。このため、財政政策は経済成長を抑制する方向に作用する、と筆者は現時点で予想している。

以上を踏まえると、石破新政権による金融財政政策は、岸田政権と大きくは変わらないだろう。同様に、規制緩和など長期的な経済成長を底上げする政策に踏み込む可能性は極めて低い。2025年度にかけての日本経済は、1%未満の「ねっとりした」成長に止まるだろう。

このため、株式市場が石破政権を好感することも期待しづらい。既に7月に行われた通貨当局による円高誘導策、日銀による断続利上げが始まったことで、春先まで好調だった日本株のリターンは米国よりも下回っている。

石破ショックは長続きしないにしても、日銀の利上げによって円高が続くとみられ、日本株の動向は、大統領選挙を控える米国株次第の状況が続くと予想される。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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