コラム

松元ヒロが被写体の映画『テレビで会えない芸人』に感じたTVマンの歯ぎしり

2021年12月30日(木)13時05分

テレビに出演できない松元ヒロを被写体にしたドキュメンタリーをテレビ局が作る。明らかな論理矛盾だ。その番組『テレビで会えない芸人』は2020年に観た。率直な感想は、まあこんなものかだった。それが再編集されて映画になった。観終えてうなる。明らかにテレビ版とは違う。何が加わったか。それはこの作品を作ったテレビマンたちの歯ぎしりだ。

描写される松元ヒロの過去と現在に、本番前の日常やたたずまいに、今のテレビ業界の自責や焦燥、怒りや煩悶、そして覚悟が、身震いしながらしっかりと重ねられている。

観終えて思う。これは松元ヒロを触媒にしたテレビの自画像ドキュメントなのだと。

magmori211222_tv2.jpg『テレビで会えない芸人』(2022年1月14日公開)
©2021鹿児島テレビ放送
監督/四元良隆、牧祐樹
出演/松元ヒロ

<本誌2021年12月28日/2022年1月4日合併号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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