『エクソシスト』は「怖い」「気持ち悪い」だけじゃない、滋味にあふれた名作ホラーだ
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<ホラー映画の嚆矢と言える1974年公開の『エクソシスト』は「邪まな悪と聖なる信仰の闘い」という単純な図式を拒絶している>
雑味という言葉がある。「このワインには雑味がある」とか「雑味がないから後味がいい」とか、どちらかといえばあまりいい意味では使われない言葉だ。辞書的には「本来のうまさを損なう不純な味」という定義が一般的だろう。
でも雑味を言い換えれば複雑な味。さまざまな要素がミックスされた味。酸っぱさだけの酢豚や辛いだけのカレーを考えれば、一般的な料理において雑味は重要なはずだ。
『エクソシスト』の公開は1974年。ならば僕は高校生。名画座通いはしていたけれど、2回も見れば月の小遣いがほぼなくなるロードショーはめったに観なかった。
でもこの映画は封切館で観た。なぜだろう。クラスメートの誰かに「すごかった」と言われたような気がする。映画好きの友人たちの間で評判だったことは確かだ。
観終えてまず思ったこと。複雑な映画だ。「怖い」「気持ち悪い」だけじゃない。
この時代にホラー映画という呼称があったかどうか分からないけれど、『エクソシスト』はその嚆矢(こうし)と言えると思う。
もちろん『エクソシスト』以前にも、狼男やドラキュラやフランケンシュタインの映画はたくさんあったし、68年には『ローズマリーの赤ちゃん』が公開されている。
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