コラム

「反日映画」と呼ばれても... 復讐劇『アジアの純真』は萎縮も忖度もしない

2020年10月13日(火)10時45分

刺殺された彼女には双子の妹がいた。妹は報復を決意する。その標的は若い男たちではなく、見て見ぬふりをした日本社会だ。そして家を出た男子高校生も、彼女と共に行動する。でも彼は知っている。本当ならば自分自身も報復されなければいけないのだ。旧日本軍が埋蔵していたマスタードガスを大量に入手した2人は、自転車2人乗りで、この国を変えるためにテロの旅に出る。

主演の韓英恵の存在が圧倒的。美しく、儚(はかな)く、そして切ない。監督は片嶋一貴で、脚本は井上淳一。どちらも若松プロの門下生だ。御大の若松孝二もちょっとだけ出てくる。

後半の展開は賛否が分かれるところだろう。僕が監督ならばこちらには行かない。でもこれはこれで見事だと思う。映画は見て見ぬふりなどしない。萎縮や忖度など、かけらもない。公開時には「反日映画」と呼ばれたらしい。ならば最後に記す。

反日映画で何が悪い。

magmori201013_2.jpg『アジアの純真』(2009年)
監督/片嶋一貴
出演/韓英恵、笠井しげ、黒田耕平、丸尾丸一郎

<本誌2020年9月15日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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