コラム

日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウンドトラック(OST)の独自性と魅力

2024年05月17日(金)09時37分
 

キム・スヒョンとキム・ジウォンの主演でこの春大ヒットした『涙の女王』よりBSS(부석순)(SEVENTEEN) -
The Reasons of My Smiles(자꾸만 웃게 돼)ティーザーMV SUPER SOUND Bugs! / YouTube

 

<韓流といえば韓国ドラマ。その劇中で流れる音楽の魅力とは?>

映画やテレビ番組、ゲームソフトなど特定のコンテンツのために制作した音楽を「オリジナルサウンドトラック」というが、韓国ではこの用語の略称として「OST」と呼ぶケースが多い。

韓国のOSTが注目を集めるようになったのは、ペ・ヨンジュンが主演を務めた『冬のソナタ』(2002年)だ。日本の韓流ブームの火付け役となったこのドラマでは、シューマンやベートーベンといったクラシックの大家の有名曲や、イージーリスニングの定番「白い恋人たち」(韓国オリジナル版のみ)などに加え、アジア特有の情感が漂うオリジナル曲を随所に挿入。いずれも純愛をテーマにしたストーリーに似合う、ゆったりとしたテンポの美しいナンバーだった。

なかでも多くの視聴者の心をとらえて離さなかったのが、男性シンガー・Ryu(リュウ)が歌った主題歌「最初から今まで」である。リリース当時無名に近かった彼は同曲のヒットで脚光を浴びて、いきなりスターダムへ。この劇的な変化のおかげもあり、キャリアが浅い歌手や新人、裏方が参加する地味な場所と見られていたOSTは、海外進出の足掛かり、もしくは自身がステップアップできるジャンルへと変わっていったのだ。


日本における韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』 RyuOfficialJP / YouTube

最新ヒットドラマ『涙の女王』にみるOSTトレンド

となると、すでに実績のあるアーティストも目を付けないわけがない。以降はビッグネームの参加もめずらしくなくなり、それにともなってヒットチャートに入るOSTも増加。今では旬のシンガーがドラマの主題歌・挿入歌を歌うのは当たり前といった感じさえすらある。こうした傾向は、今春放送された話題のドラマ『涙の女王』のOSTをチェックするとよく理解できるだろう。

『星から来たあなた』『愛の不時着』を手掛けたパク・ジウンが脚本を書き、『不可殺』のチャン・ヨンウと『ヴィンチェンツォ』『シスターズ』などで知られるキム・ヒウォンが演出を担当したこのヒット作は、物語の展開や演技の素晴らしさとともにOSTの充実ぶりも注目を集めた。

同OSTに参加したのはたくさんのヒットソングをもつアーティストばかり。それぞれがドラマの世界に寄り添った歌声を響かせるが、特に注目したいのはバックのサウンドである。陽気なダンスミュージックが得意なBSS(ブソクスン/人気ボーイズグループ・SEVENTEENのメンバー3人によるスペシャルユニット)は、ここでは穏やかなトーンのラブソングを歌い、R&B系のCrushやアコースティックポップの代表格・10cmなども自身のいつもの作風とは若干異なるバラードを披露する。


『涙の女王』よりBSSの「The Reasons of My Smiles(자꾸만 웃게 돼)」フルバージョン SUPER SOUND Bugs! / YouTube

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米9月雇用11.9万人増、予想大幅に上回る 失業率

ビジネス

米消費者、42%が感謝祭にクレカ利用予定 前年から

ビジネス

ドイツ経済、第4四半期は緩やかに成長 サービス主導

ワールド

資産差し押さえならベルギーとユーロクリアに法的措置
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story