コラム

K-POPをよりディープに味わうために押さえておきたい『韓国大衆音楽賞』の受賞者たち

2025年03月30日(日)11時35分
 

『韓国大衆音楽賞(KMA)』で「今年のミュージシャン」をはじめ3部門を受賞したイ・スンユン  이승윤 / YouTube

<チャートだけでは測れない韓国音楽シーンの幅広さ、奥深さを映し出す音楽賞が、今年も刺激的な受賞者を発表した>

韓国の音楽業界では、とんでもなく売れている曲の基準として、「パーフェクトオールキル(PAK)」という用語をしばしば用いる。これは、MelonやGenie、Bugsといった6つのデジタル音源配信サイトのデイリー/リアルタイムチャートでトップに輝き、さらに上記のサイトのデータをもとに独自集計したiChartのウィークリー/リアルタイムチャートの1位を獲得することを指す。だが、すべてをクリアできる楽曲は年に10曲あるかどうか。過去の達成曲で主なものをピックアップすると、NewJeans「Ditto」(2022年)、BTS「Dynamite」(20年)、TWICE「TT」(16年)など、おなじみのヒットソングがずらりと並ぶ。

エキスパートたちが音の良しあしだけで決める音楽賞

とはいえ、PAKは数ある判断基準のひとつであり、当然ではあるが、"売れていない曲=聴くに値しない"というわけではない。『韓国大衆音楽賞(KMA)』は、このような視点を大切にした授賞式で、04年から年に一度のペースで開催。業界人(記者、編集者、音楽評論家など)が選考を務め、メジャーだけでなくインディーズも含めた20を超える部門を審査し賞を贈呈する。その道のエキスパートたちが音の善し悪しだけで決めた受賞作は、プロの音楽ライターでさえも知らないものが多数含まれており、とても参考になっている。

KMAは「今年のミュージシャン」「今年のアルバム」「今年の歌」「今年の新人」といった〈総合部門〉と、K-POPはもちろん、ロック、ジャズ、フォーク、ヒップホップ、エレクトロニックなどに分けて選ばれる〈ジャンル部門〉の2種類がある。今年2月に実施された第22回も、いつものように海外のリスナーにとっては刺激的な作品ばかりが受賞しており、あいかわらず"我が道を行く"といった感じが実に頼もしい。それでは個人的に気になったアーティストやアルバムをいくつか紹介したいと思う。

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

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