コラム

2020年、世界は「中国の実力」を見せつけられた

2021年02月17日(水)17時10分

財政出動がなければ日本経済はもっと落ち込んでいたはずだから、財政赤字が一時的に増えても財政支出を拡大して経済の下支えをするというのはもちろん正しい。だが、支出の中身が適切でないために、効率よく経済の回復につなげられていないのではないだろうか。

膨大な国費を費やしたあげくに感染拡大の第3波を引き起こし、再度の緊急事態宣言を余儀なくさせたGoToキャンペーンの愚はいうまでもないが、国民全員に10万円ずつ配った特別定額給付金も無駄が大きかったと思う。

コロナ禍で収入が落ち込んで生活費のやりくりに困っていた人々にとって給付金は有難かったであろうが、収入が大して減らなかった人にも給付する必要があったとは思えない。

受給者の26%は貯蓄した

それでも給付金を貰った人がそれを旅行などに支出すれば経済を刺激する役には立つ。しかし、給付金を貰った人が貯蓄したら経済を回す役にも立たない。ニッセイ基礎研究所の調査では給付金を貰った人の26%は貯蓄したという(久我尚子「特別定額給付金10万円の使い道」)。これは特別定額給付金の一部(数兆円!)が無駄であったことを示唆する。ちなみに筆者は給付金は困窮している人の手にわたるべきだと考え、受領したらただちに全額をしかるべき団体に寄付した。

コロナ禍は紛れもなく危機だから財政支出を拡大してなんとか痛みをやわらげようというのはいいのだが、それによって野放図な財政支出が正当化されてしまっては将来に大きな禍根を残すことになるだろう。

中国は言論や報道が統制されているから中国から発信される情報は眉に唾つけてみる必要がある、というのはその通りである。だが、だからといって中国の情報は一から十までインチキだとみてしまうならば、中国で得られた経験や教訓から学ぶこともできなくなってしまう。

中国は人類で最初に新型コロナウイルスに対峙し、それに打ち勝っているにもかかわらず、欧米諸国も日本もその経験に学ぼうとしなかった。その結果、世界で1億人以上もこのウイルスに感染し、242万人も亡くなっている。中国への偏見をもう少し減らすことができれば、これほどの犠牲を生まなくて済んだはずだ。

(注1)私も2011年2月15日付の『毎日新聞』でこの件についてかなり長いコメントをしている。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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