コラム

女性向けマーケティングの要諦を「美白」の戦略分析から探る

2017年03月23日(木)15時33分

P&Gは米国のビジネス誌であるフォーチュンにおける「社員の能力ランキング」でしばしばトップを獲得しており、企業理念のなかでも「社員が常に会社にとって最も重要な資産」と明記している。優れた社員価値が優れた顧客価値を生み出している好事例であると言えるだろう。

さて、そんなP&Gは毎年のように美白化粧品の分野でもSK-IIの新商品を投入しているが、今季の商品においては、昨年と同様に、「肌曇り」対策を訴求ポイントの中核に据えているのが特徴だ。

「肌曇り」とは、「長年にわたって蓄積された肌の奥にあるシミ予備軍や目に見えない隠れたダメージが肌の曇りとなること」を表現したものだ。「肌が曇っている」という女性にとって刺さるわかりやすい表現と、「それを解決したい」というニーズが合致したことが功を奏した商品である。

美白に対して、化粧品各社は毎年新たな訴求ポイントを打ち出すのに躍起になっているが、実際にその年に消費者の支持を集めて市場争点となってマーケットで生き残る訴求ポイントは少ない。SK-IIの「肌曇り」対策は昨年からのもので今年にまで生き残った数少ないものなのである。

クレ・ド・ポー ボーテ by 資生堂

クレ・ド・ポー ボーテの「セラムコンサルタントエクレルシサン」は、美白化粧品の最高級ブランドの1つである。メーカー名は完全に伏せられているが、資生堂の最高級ラインである。

トヨタが米国で高級車を展開する際にトヨタであることを伏せてレクサスをブランド展開したのと同様に、一般消費者には資生堂であることは伏せた独自のブランド展開をしているのがクレ・ド・ポー ボーテだ。資生堂において、国内・国外いずれの部門にも属さない完全に単独の事業部門となっている。

クレ・ド・ポー ボーテの特徴の1つは、ラグジュアリーブランドとして、そのブランド哲学の体系が細部にわたるまで定義されていることである。「世界中の女性を輝かせ、歓喜に満ちあふれた世界にする」というブランドビジョンを掲げる一方、「美しく華やか、かつ社会や環境への意識も高い知的な女性」というアイデアル・ユーザー(理想の顧客像)も明確に定義している。

同ブランドでは特にアイデアル・ユーザーには強いこだわりをもっており、さらに「本物、本質を見極める審美眼を持ちながら、新しさへの探究心が旺盛な人、その魅力で周囲の人も輝かせる人」と具体的に表現している。

今回の美白化粧品においても、同ブランドでは、「美白ケアは、なりたい肌の目標を高めて設定すること」を提案している。より具体的には、クレ・ド・ポー ボーテは「ダイヤモンド美肌美白理論」という理論をこの商品と同時に提示した。実際のダイヤモンドが3種類の輝きの掛け合わせでできていることに着目し、肌の美白の輝きの構造に応用したものであると説明している。

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

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