コラム

TBS「直撃!コロシアム‼ズバッと!TV」炎上で、出演者として言いたいこと

2016年05月30日(月)16時24分

人民日報系タブロイド紙・環球時報のサイト「環球網」の微博(ウェイボー)より

<先週、辛坊治郎氏が司会を務める討論番組に出演したことで、中国人から「漢奸(売国奴)」と猛烈な批判を受け、微博に謝罪文をアップした。謝罪に至った背景を、自らの口で説明する>

 昨年4月の新宿区議選で落選した時にも落ち込まなかったほど精神的にタフな李小牧が、出張先の中国・杭州で頭を抱えた。私が出演し、5月23日にTBS系列で放送された討論番組「直撃!コロシアム‼ズバッと!TV」に対して、直後から中国人の批判が殺到。私の微博(中国のSNS)とフェイスブックのアカウントが炎上したのだ。この1週間、私は中国ネットで完全に「漢奸(売国奴)」扱いされていた。

 番組を見なかった読者のために説明しておこう。辛坊治郎氏が司会を務めるこの番組は、在日中国人50人を呼び、「今話すべき中国人50人」というタイトルの討論会を開いた。偽装食品問題やPM 2.5、在日中国人および爆買い観光客のマナーといった日本人をイラ立たせている問題について、在日中国人に中国の本音を語らせよう、というのが「筋書き」だ。

【参考記事】熊本地震に寄せられた中国人の温かい言葉(とお金)

 元中国人である私も「ジャーナリスト」の肩書きで出演した。隣の席はNHK「テレビで中国語」講座でおなじみのタレント段文凝さん。同じく「ジャーナリスト」で友人の周来友氏も参加して、元宮崎県知事の東国原英夫氏ら日本人を中心とするパネラーとの議論は大いに白熱した。私が批判されたのは、「マンションの自転車置き場に置いていた自転車を中国人の入居者が勝手に使って困る」という日本人の苦情に関する議論。「マンションの駐輪場は狭い。連絡先と帰る時間を書いた紙を残せばいい。資源の節約にもなるし、共有すればいいんじゃないか」と発言したところ、放送直後から中国人の批判の書き込みが殺到した。

今思えば、我ながら甘い判断だった

 最初に説明させていただくが、討論番組といっても出演者が勝手に議論を進めるわけではない。テレビ業界を知らない人は驚くかもしれないが、こういった番組には台本がある。事前にしゃべる内容をプロデューサーやディレクターと打ち合わせもする。「筋書き」と書いたのはそのためだ。台本によれば、私は7カ所で発言することになっており、その1つがこの自転車問題だった。収録前の打ち合わせで、「他人の自転車を持って行くなんて考えられない」と言う私に、プロデューサーは「逆の方向から議論してみたら?」と持ちかけてきた。なるほど、社会主義の中国では以前は自転車も「共有」されていた。「マナーがなっていない!」と何かと非難されがちな中国人を擁護するのも悪くないし、何よりその場が盛り上がる──。

【参考記事】銀座定点観測7年目、ミスマッチが目立つ今年の「爆買い」商戦

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story