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「嫌韓」保守政治と「反日」旧統一教会の併存を生んだ日本政治の弛緩
2010年代後半、国の内外でQアノンやトランプ主義と呼ばれる陰謀論を含めた保守系ポピュリズムの言説が席巻し、日本では憲政史上最長となる安倍政権下で、岸・安倍家3代にわたる旧統一教会との関係への「忖度」が浸透。その一方で、戦後最悪とも言われるほど日韓関係は悪化し、竹島問題やGSOMIA(秘密情報保護協定)破棄などをめぐって日本での嫌韓世論はピークに達する。
にもかかわらず「エバ国家日本はアダム国家韓国に贖罪するべし」とする教義で日本信者からの金銭収奪を正当化していた旧統一教会が、ほかならぬ「戦後保守政治の最高峰」としての安倍政権下で政治への侵食を続けていた──。
北朝鮮とのパイプを持つ統一教会を拉致問題解決のために利用する意図があったとしても、容易には理解し難いねじれ現象である。
保守政治の「嫌韓」と旧統一教会の「反日」思想が矛盾することなく並存したのは、おそらく「イデオロギー」が現在の日本政治の要を実際には占めてはいないからだ。一強多弱の政治状況の下で野党の弱体化は際立ち、国の将来を憲法理念から問う国政論議は衰退する。
嫌韓姿勢が岩盤支持層と共鳴したこともあって安倍政権は国政選挙に連勝。長期政権の存続が、政治が本来備えるべき政教分離の緊張感や、政治原理を侵食するカルトへの警戒感を溶解させたのだ。
山上徹也がいら立ちを募らせたのはそうした政治の弛緩であり、天宙平和連合のイベントにビデオを寄せた安倍元首相の「鷹揚(おうよう)と融通無碍(ゆうずうむげ)」だったのかもしれない。そうだとすれば、山上の思考回路にあるのは論理の飛躍ではない。カルトと政治の結節点を強襲する銃弾の恐怖で旧統一教会が野放図に享受する「弛緩した政治回路」を反転させ、教団を一挙に「社会の敵」に突き落とす論理がそこにはある。
2019年に来日した韓鶴子の襲撃を断念した山上は、第三者である安倍元首相を犠牲にすることで「正義とサタン」の構図を暗転させる意趣返しを行ったのだ。
「一般人の基準」から見て疑念
「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」(20条)。日本国憲法は信教の自由を保障するとともに「公金支出の禁止」(89条)を含む厳格な政教分離を採用している。
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