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今度の参議院選挙で審判を受けるのはむしろ「野党」
自民党十八番の「党内擬似政権交代」が始まった
もちろん低熱量と微風の永田町をよそに、国外ではかつてないような大嵐が吹き荒れている。暴力を剥き出しにしたロシアによるウクライナ侵略は日本国民の間に、台湾有事への「想像」だけでなく、語り継がれるシベリア抑留等の戦争の「記憶」も改めて喚起した。ところが永田町で「核共有論」や「敵基地攻撃能力」改め「反撃能力」、「防衛費対GDP比2%」といった防衛力強化の議論を主導し注目を集めたのはもう一人の「令和の元老」とも言うべき安倍晋三元首相だった。非核三原則との抵触、日米安保の範囲、財源の手当等で議論が分かれる高度な政策イシューであるが、それが政権与党と野党間で繰り広げられる「権力闘争としての論争」ではなく、「ハト派」宏池会と「タカ派」清和研等との間の「政策論争」という形で国民に受容されるとなると、野党の出番はなくなる。自民党十八番の「党内疑似政権交代」と同じ舞台設計だ。立憲民主党が参議院選挙向けに掲げた「生活安全保障」という造語が有権者に浸透しないのは、語感の支離滅裂さだけが原因ではあるまい。
つまり岸田政権はこの9カ月で「やはり」上手くやっているのだ。高数値を維持してきた内閣支持率は不思議でも何でもない。それに対して際立つのが野党側の不作為であり「地力」の無さだ。今度の参議院選挙で「評価」されるのはむしろ野党なのだ。
むろんガソリン価格の高騰をはじめとする「物価高」と「円安」の激流が日本社会を襲っている最中の国政選挙であり、政権支持率も下降傾向にある。政府の新型コロナ対策と景気対策に対する不満も蓄積している。「文書通信交通滞在費」(文通費)改め「調査研究広報滞在費」の改革議論も結局放擲されたままだ。失言や醜聞といったきっかけ一つで国民の不満が爆発し、与党の獲得議席が低調に終わる可能性がないとは言えない。しかしその前に、今夏の参議院選挙で立候補者が向き合うのはそもそも国民の政治に対する不信であり、選挙で評価されるのは野党自身でもある。
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