コラム

菅政権「9月5日のパラ閉会後解散」という見立ての説得力

2021年05月04日(火)20時39分

「9月5日のパラ閉会後解散」へ向けて衆院議員は走る? Thomas Peter-REUTERS

<安倍前首相の「菅続投」発言で、政局の焦点はいつ総選挙が行われるかに絞られた。7月の東京都議選、菅首相のお膝元・横浜市で8月に実施される市長選、そして初の女性宰相を狙う小池百合子都知事の「五輪中止カード」......というファクターはあるが、説得力があるのは9月5日のパラ閉会後の解散だ>

「総裁選挙、去年やったばかりですから。1年後にまた総裁を代えるのか、自民党員であれば常識をもって考えるべきだと思いますし、当然、菅総理が継続して総理の職を続けられるべきだろうと私は思います」

5月3日、安倍晋三前首相がBSフジ「プライムニュース」の生放送で、菅首相の再選支持をはっきりと表明した。更に、次の総裁選における菅再選を前提に、「形式的に総裁選を無投票で終わらせるのか、ないしはそれなりに自民党には多士済々で色々な人がいるんだよというのを見せる意味もあって総裁選で活発な論議をするのか」という反町理キャスターの質問に対して、

「例えばその(総裁選)前に選挙があれば、選挙で国民は菅総理を選んでいるわけですから、その後党内で代えるのか。私はおかしいと思います」

と回答。「総裁選前に解散総選挙を行うこと(早期解散)」、かつ「自民党がその総選挙で勝利すること」を前提とした話であるが、菅総裁の無投票再選の可能性まで示唆した。

菅首相に代わる新しい「選挙の顔」を総裁選で選出した後に解散総選挙を断行するという、これまで一部で囁かれてきた「菅降ろし」の動きに釘を刺すかのような踏み込んだ内容だ。昨年の首相辞任後も党内に大きな影響力を有し、病気寛解後の「再々登板」を期待する声も挙がる安倍前首相の発言だけに、「菅続投」の流れを決める可能性がある。

内閣改造の可能性と河野ワクチン担当相の去就

4月25日の参議院広島選挙区の再選挙で自民党は議席を失い、岸田文雄・広島県連会長に厳しい視線が向けられている。ポスト菅の有力候補が党内に見当たらない現状を考えれば、よほどのことが無い限り、菅首相の総裁続投は決定的な状況になったと言えるのではないだろうか。

そうだとした場合、今後の党内力学としては、現在の内閣の布陣を維持したままで解散総選挙を行うのか、それとも総選挙に向けて顔ぶれを変えるために事前の内閣改造を行うのかが焦点の一つになる。

2020年9月に発足した第1次菅内閣だが、コロナ対策をめぐっては、田村憲久厚労相(石破派)、西村康稔コロナ担当相(細田派)、河野太郎ワクチン担当相(麻生派)が鼎立しており、交通整理がなされる可能性がある。2月に発覚した総務省官僚接待事件の監督責任に絡んで武田良太総務相(二階派)の去就も注目される。ワクチン接種は自治体との調整が肝であることから、河野大臣が総務相に横滑りすればワクチン接種の陣頭指揮をより効率的に取ることが可能になるだけでなく、3月16日の衆議院財務金融委員会で武田大臣と「あまり仲が良くないので」と正直答弁をした麻生太郎副首相の歓心も買うことになろう。しかし、二階俊博幹事長がそれを許すかどうか。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ安定化・復興へ3段階計画 国務長官が

ワールド

EU、グリーンランド支持 国際法違反容認せず=コス

ワールド

トランプ氏、グリーンランド購入巡り活発な協議 NA

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談を希望 「安全の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 5
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story