コラム

スペイン、ポルトガル、南仏「大停電」の原因は「再エネへの移行」?サイバー攻撃めぐるデマも

2025年04月30日(水)16時56分

「英国を含む欧州の電力システムは相互接続が進む。脱炭素化の中で需給変動を調整する役割を果たしている。しかし相互依存度が高まり、輸送、暖房、冷却、データセンターなど電力依存セクターが増加したことで電力システムが天候リスクにさらされる新たな経路が生まれている」

「現時点で原因を特定するのは時期尚早」

英キングス・カレッジ・ロンドン工学部のグラツィア・トデスキニ准教授はこんな見方を示す。

「スペインの送電事業者は原因不明の急激な電力流量の変動がスペインを欧州の送電網から切り離し、イベリア半島送電網が突然孤立状態に陥り、大規模な電力不均衡が発生しシステム障害を引き起こしたと報告している」

「電力網は広大な相互接続システムであり、その安定性は発電と需要の非常に精密なバランスに依存している。ある地域が断線すると、その地域から電力の供給(または需要)に依存する近隣地域に連鎖反応を引き起こす可能性がある」

「欧州大陸各地で記録された周波数データには断絶が発生する前に変動が確認されているが、現時点で原因を特定するのは時期尚早だ。このような事象は通常、例外的な状況下で発生する」とトデスキニ准教授は慎重だ。

再生可能エネルギーは環境にやさしい反面、周波数制御には弱い面がある。今回の大停電はAI(人工知能)、データセンター、電気化で電力需要が増える中で脱炭素化を進める電力システムの脆弱性をさらけ出したと言えそうだ。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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