コラム

スペイン、ポルトガル、南仏「大停電」の原因は「再エネへの移行」?サイバー攻撃めぐるデマも

2025年04月30日(水)16時56分

再生可能エネへの移行が送電網の脆弱性を高めた?

温暖化懐疑主義者はスペインやポルトガルの電源構成に占める再生可能エネルギーの割合が高い点を強調する。英紙デーリー・テレグラフ(28日付)は「ネットゼロが欧州最大の停電の原因。専門家は太陽光と風力発電への依存が両国を脆弱な状態に陥れたと指摘した」と報じた。

再生可能エネルギーが電源構成に占める割合はスペインが56%、ポルトガルが61%で、気候変動対策の優等生だ。28日昼に2度、電力供給と需要の急激な不均衡が起きており、自動的な負荷遮断メカニズムが作動し、送電網全体に連鎖的な故障が発生した可能性が指摘された。

それでは再生可能エネルギーへの移行が送電網の脆弱性を高めたのか。

英レディング大学のデービッド・ブレイショー教授(気候科学とエネルギー気象学)は「電力システムはネットワークで、局所的な障害を広い地域に伝播させる。電力需給をほぼ瞬時に調整する必要があり、発電機は正確に同期を保つ必要がある」と解説する。

「ネットワーク上の要素(発電機や送電線、大規模な電力消費者)が突然消失すると、需給バランスが崩れ、システム周波数が変動し始める。この変動が過大になると他の機器が自動的に停止し、バランスがさらに悪化する連鎖反応を引き起こし、重大な停電を誘発する可能性がある」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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