コラム

英防衛メーカーが砲弾生産を「16倍に増産」で起きること...「戦時体制」ロシアへの備えの本気度

2025年04月22日(火)20時17分

輸送コンテナを使った工場で年間最大100トンのRDXを生産する。大規模工場と違って輸送コンテナなら新設が簡単で、敵国から攻撃を受けても損失リスクを分散できる。BAEシステムズはこの革新的な爆薬生産システムを輸出することも視野に入れているという。

ITARの対象となる武器弾薬は米国の同意なしに製造、販売、第三国への供給はできない。トランプ氏の貿易戦争、ウクライナへの軍事・情報支援停止、カナダとデンマーク領グリーンランド併合の恫喝は英国と欧州が米国製防衛装備に依存することへの懸念を大きく膨らませている。

欧州の防衛支出を最大で8000億ユーロまで増やす

BAEシステムズは英国で155ミリメートル砲弾を製造する唯一の企業だが、砲弾の大部分はウクライナに供与され、英国は極度の砲弾不足だ。ロシアは毎日約1万2000発の砲弾を発射するのに対してウクライナ側は約7000発。北朝鮮はロシア軍の需要の約50%を供給している。

米国が欧州安全保障から後退する中、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会とカヤ・カッラス外務・安全保障政策上級代表は3月、2030年までに欧州の安全保障を再構築する「欧州防衛白書」を発表し、欧州の防衛支出を最大で8000億ユーロまで増やす方針を打ち出した。

白書は次の7つを優先分野に挙げる。(1)対空・ミサイル防衛(2)砲兵・ミサイルシステム(3)弾薬(4)ドローン(無人航空機)対ドローン(5)軍事移動能力(6)人工知能(AI)・量子技術・サイバー・電子戦(7)戦略的支援(空中輸送・情報収集・通信)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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