コラム

EU離脱を選択した英国の大誤算...移民の純増数が当時の3倍、「過去最高90万6000人」に激増していた

2024年11月29日(金)17時54分
EU離脱後のイギリスで移民が激増していた

EU離脱から4周年となった今年1月に行われた離脱反対派のデモ  WIktor Szymanowicz via Reuters

<EU域内からの移民増加が引き金になった「ブレグジット」だが、離脱後は非EU移民が激増。前保守党政権時代の政策に批判が集まっている>

[ロンドン発]2023年6月までの1年間で英国への出入国を差し引きした移民の純増分が実は過去最高の90万6000人に達していたことが11月28日、国家統計局(ONS)の発表で分かった。当初は74万人と見積もっていたが、16万6000人を加えて上方修正した。

新党・改革英国のナイジェル・ファラージ党首(下院議員)は英メディアに「恐ろしい数字だ。保守党に嘘をつかれるのはもうたくさん。労働党政権でさらに悪い数字になるだろう」と批判した。改革英国の党員数は10万人を超え、最大野党・保守党に代わって政権奪取をうかがう。

英国の欧州連合(EU)離脱はEUからの移民激増が引き金になったが、当時の焦点は1年間で30万人の純増。3倍に膨れ上がったのは香港の国家安全法、ウクライナ戦争の影響もあるとは言え、非EU移民の激増が大きく、これでは何のためにEUを離脱したのか分からなくなる。

留学ビザの帯同制限で海外留学生が英国に連れて来る家族数が激減し、24年6月までの1年間では72万8000人に減った。移民流入数は120万人7000で、非EUが103万4000人(86%)、欧州経済領域(EEA)とスイス11万6000人(10%)、英国籍保有者5万8000人(5%)。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、マスク氏との電話会談「興味なし」 6日

ビジネス

米関税がユーロ圏にデフレ圧力、物価1%に接近も=ポ

ビジネス

中加首相会談、李氏は関係強化呼びかけ 「利害対立な

ビジネス

テスラ株空売り筋、マスク氏とトランプ氏の決裂で40
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 9
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 10
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story