コラム

服装、背景、左手のブレスレット...チャールズ英国王、初の肖像画に隠されたメッセージ

2023年04月11日(火)17時11分
イギリスのチャールズ国王

チャールズ英国王(3月31日) ADRIAN DENNIS/Pool via REUTERS

<戴冠式行進を4分の1に短縮するなど生活苦の市民に配慮する一方、数々の問題を抱えるチャールズ国王が肖像画で打ち出した新たな英王室のイメージ>

[ロンドン]5月6日に迫ってきたチャールズ英国王の戴冠式の行進ルートが発表された。慈善活動家ら2000人以上の国内外ゲストが招待され、日本からは秋篠宮ご夫妻が参列する。生活費の危機に市民が苦しむ中、「小さな王室」を目指す国王の意向で行進は故エリザベス女王の戴冠式(1953年)の8キロメートルから4分の1の2キロメートルに短縮された。

国王夫妻を乗せた御車はバッキンガム宮殿を出発、ザ・マルを通ってトラファルガー広場南側を曲がり、ホワイトホール(英国の官庁街)を下って移動、戴冠式が行われるウェストミンスター寺院に到着する。御車はギシギシと音を立てながら進むため「悩ましい揺れ」(ビクトリア女王)、「恐ろしい」(エリザベス女王)と評判が悪かったが、改良された。

英王室は内外に深刻な問題を抱えている。王室を離脱したヘンリー公爵(王位継承順位5位)、メーガン夫人との対立を和らげるため、国王は2人に戴冠式の招待状を送った。奴隷貿易について「個人的な悲しみの深さ」を表明している国王は旧植民地国の批判を受け、17~18世紀における英王室と奴隷貿易の関係を調べる研究に協力すると表明した。

女王の戴冠式が行われた53年、英国は依然として砂糖と肉が配給制で、各都市の至る所に爆撃の跡が残されていた。

いま英国をインフレと生活費の危機が直撃する。国王は戴冠式のパレードを大幅に短縮し、公務を担う現役王族の数を絞り込むなど、すでに王室のスリム化に着手している。君主に属する公有地を管理する法人「クラウン・エステート」の洋上風力発電所のリース契約による増益を公共の利益のために使う方針も打ち出している。

肖像画の貴金属・宝石類は権力、富、地位の象徴だが

英名門ケンブリッジ大学で学んだ国王は貧困問題や環境問題に取り組み、2021年には、環境に優しい取り組みに投資するよう企業を促す持続可能な市場構想「テラカルタ(地球憲章)」を発表している。国王の権限を制限し、人々の基本的な権利と自由の信念をうたった1215年の「マグナカルタ(大憲章)」がモデルだ。

ニュースをイラスト入りで伝える雑誌イラストレイテド・ロンドン・ニュース戴冠式号で発表された初のチャールズ国王の肖像画について、英紙タイムズは「王族の肖像画に描かれる貴金属・宝石類は通常、権力、富、地位を意味する。しかし、チャールズ国王の治世で初めて描かれた肖像画には全く異なるメッセージを持つブレスレットが描かれている」と報じる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済指標「ハト派寄り」、利下げの根拠強まる=ミラ

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story