コラム

服装、背景、左手のブレスレット...チャールズ英国王、初の肖像画に隠されたメッセージ

2023年04月11日(火)17時11分

作者の画家アラステア・バーフォード氏(36)はロンドンの外国人特派員協会(FPA)で取材に応じ、「2月にバッキンガム宮殿で開催された生物多様性のためのレセプションで国王に謁見し、2週間で完成させました。その際、国王はアマゾン先住民のドミンゴ・ピーズ氏から気候変動と持続可能性を象徴するブレスレットを贈られました」と打ち明けた。

230411kmr_cbg01.jpg

チャールズ国王が即位してから初の肖像画を描いたアラステア・バーフォード氏(筆者撮影)

イングランド南西部ドーセット州出身のバーフォード氏はエリザベス女王の奨学金を受け、巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ・ブオナローティを生んだフィレンツェに留学した。15年には今回と同じイラストレイテド・ロンドン・ニュースの依頼で国王の母を描いている。

「戴冠式で変わるのは国家ではなく個人」

「国王に実際に謁見できるとは思ってもいませんでした。2月ごろに連絡があり、謁見できると言われました。バッキンガム宮殿で生物多様性を支援するレセプションがあり、私は1時間にわたって、国王の前にいて出席者と交流している様子を観察しました」とバーフォード氏は振り返る。

「カメラを持ち込むことを許されませんでした。スケッチブックと鉛筆を持っていくことは許され、携帯電話で何枚か写真を撮ることはできると言われました。そこにいたフォトグラファーの1人にこれでは国王の肖像画は描けないとこぼすと、彼は王室の許可を取った方が良いとアドバイスしてくれました。国王はバッキンガム宮殿の3つの部屋を案内されました」

「最初の部屋で先住民のリーダーたちと会い、ブレスレットやネックレスを贈呈されました。ネックレスの方はちょっと華美な感じがしました。ブレスレットの方が身近な感じがしました。君主の肖像画の多くは国王や女王という個人が見失われてしまう傾向があると思います。個人は肖像画に描かれたローブや内装、建物の豪華さに埋没してしまいがちです」

「戴冠式によって変わるのは国家ではなく、個人です」とバーフォード氏は言う。「そこで私は国王が王室の伝統や文化の中にいるのではなく、もっとカジュアルな服装で、もっとカジュアルに描くことで国王という役割よりも個人を表現したいと思いました。チャールズ国王は明らかに環境問題の王様です。このブレスレットもある種の幻想なのです」

気候変動と持続可能性への取り組みこそ、国王のライフワークなのだ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米高裁、シカゴ州兵派遣差し止め命令巡りトランプ政権

ビジネス

FRBミラン理事、利下げ加速を要請 「政策は予測重

ワールド

中東和平への勢い、ウクライナでの紛争終結に寄与も=

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米中通商摩擦再燃が重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 10
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story