コラム

「欧州スーパーリーグ」とは、英プレミアのことだった? 他国とここまで差がついた理由

2023年02月14日(火)11時50分
マンチェスター・シティFCエティハド・スタジアム

マンチェスター・シティFCのホームスタジアム「エティハド・スタジアム」 Kai L Connell-Shutterstock

<「マネーリーグ」の変遷から見える「金満」プレミアリーグの圧倒的資金力。W杯を境に勝ち組/負け組がより鮮明に>

[ロンドン]「イングランドサッカーはいかにして真のスーパーリーグになったか。巨額の戦力補強でプレミアは事実上、欧州スーパーリーグに似た様相を呈し始めた」――英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)がこんな特集記事を組んだ。サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会を境に欧州の「勝ち組」「負け組」リーグがより鮮明になってきた。

ロシアのウクライナ侵攻でロシアの新興財閥(オリガルヒ)ロマン・アブラモビッチ氏から米実業家トッド・ベーリー氏らが率いるコンソーシアムに売却されたチェルシー。冬の移籍でW杯優勝のアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデスを1億700万ポンド、ウクライナ代表FWミハイロ・ムドリクを8900万ポンドで獲得した。

他にフランス代表DFブノワ・バジアシーレ(3500万ポンド)、U21フランス代表DFマロ・ギュスト(3070万ポンド)らを補強したチェルシーはイタリア、スペイン、ドイツ、フランスのトップクラブをすべて合わせた金額より多くの移籍金を使った。プレミア全体でこれまでの記録のほぼ2倍の7億3500万ポンドを費やした(FT紙)。

プレミアリーグは4年に及ぶ調査の結果、2008年にアブダビ・ユナイテッド・グループに買収されてから6回もリーグ優勝したマンチェスター・シティを100件以上の財務規則違反で告発した。スポンサー収入や運営費、監督や選手の高額報酬を含むクラブの財務情報を正しく報告していなかった疑いが指摘されている。

頓挫した欧州スーパーリーグ構想

国際会計事務所デロイトが毎年発表している欧州クラブの収入ランキング「フットボールマネーリーグ」によると、21/22年シーズンは1位マンC、3位リバプール、4位マンチェスター・ユナイテッドをはじめ、上位20クラブにプレミアの11クラブがひしめく。5クラブだった96/97年シーズンに比べてプレミアの隆盛ぶりが際立つ。

21年4月、欧州の主要12クラブがスーパーリーグ構想をぶち上げたのは記憶に新しい。プレミアのリバプール、マンC、マンU、トッテナム・ホットスパー、アーセナル、チェルシー、スペインのレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、イタリアのACミラン、インテル・ミラノ、ユベントスが名乗りを上げた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国10年債利回りが22年ぶり低水準、人民銀が介入

ワールド

台風11号、ベトナムの工業団地に被害 数週間の稼働

ワールド

OPECプラスは増産を=インド石油省高官

ビジネス

FRB、0.5%利下げの強い論拠ある=ダドリー前N
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...いつしか「懐かしいだけの、美しい記憶の中の存在」に
  • 4
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    公的調査では見えてこない、子どもの不登校の本当の…
  • 8
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 9
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 10
    「とても健康で幸せそう」茶色いシミや黄ばみが酷評…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 8
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 9
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 10
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story