コラム

「欧州スーパーリーグ」とは、英プレミアのことだった? 他国とここまで差がついた理由

2023年02月14日(火)11時50分

これに3クラブを加えた15クラブが創設メンバーとなり、残り5クラブが前季の成績に基づき出場権を獲得する構想だった。創設メンバーにはコロナ危機による減収を穴埋めし、インフラ支援のため31億ポンドが提供されると報じられた。ドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンやボルシア・ドルトムント、フランスのパリ・サンジェルマンの名はなかった。

利害が衝突するUEFA(欧州サッカー連盟)やFIFA(国際サッカー連盟)は欧州スーパーリーグ構想に猛反対。ボリス・ジョンソン英首相(当時)は「スーパーリーグ構想はサッカーに打撃を与える。グローバルブランドになったクラブも歴史的には地域社会から生まれた」と政治介入した。選手やサポーターからも総スカンをくらい、構想はあえなく頓挫した。

凋落のバルセロナ

デロイトの「フットボールマネーリーグ2023」によると、21/22年シーズンの上位20クラブの総収入は81億5000万ポンドで、20/21年シーズンの72億6400万ポンドより13%増加し、コロナ前のレベルまでほぼ近づいてきた。マッチデー収入(試合のチケット、物販・飲食)は9800万ポンドから12億4000万ポンドまで回復した。

スポンサーシップや直営店、ライセンスなどコマーシャル収入もプレミアのクラブを中心に31億ポンドから33億6600万ポンドに増えた。一方、マネーリーグの「強豪クラブ」バルセロナとレアル・マドリードは全盛期の18/19 年シーズンからそれぞれ1億8000万ポンド、3800万ポンドも減らしており、コロナ前の水準まで回復していない。

バロンドールを史上最多の7度も受賞したアルゼンチン代表FWリオネル・メッシを放出せざるを得なかったバルセロナはマネーリーグの1位から7位に転落している。

これに対してプレミアのリバプールは同期間に8600万ポンド増、チェルシーが4900万ポンド増を記録した。マンCは1億600万ポンド増とマネーリーグでも2年シーズン連続で首位に躍り出た。アブダビ・ユナイテッド・グループに買収される前は21位だったマンCは世界トップの監督や選手を集め、コマーシャル収入を増やしてビジネスでも大成功を収めた。

マネーリーグのトップ30クラブを見た場合、プレミアは16クラブで、リーグに所属する全クラブの8割を占める。スペインは5クラブ、イタリアとドイツは各3クラブ、フランス、ポルトガル、オランダが各1クラブだ。「金満リーグ」と揶揄されるプレミアは、かつての国際金融街シティと同様、軽い規制による不当な優位性のおかげで繁栄しただけなのか。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額

ワールド

トランプ氏、ベネズエラと「並外れた」関係 石油富豪

ワールド

トランプ氏のイラン合意状況整備に期待、軍事行動回避

ワールド

ロシア、米との経済協力分野選定 ウクライナ戦争後見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story