エプスタインは有力者と情報機関を結ぶ「アクセス・エージェント」だったのか
A whiff of espionage around the Epstein files points to how intelligence and influence interact
エプスタイン(左)とマクスウェル。2025年12月19日、米司法省が公開した画像 U.S. Justice Department/Handout via REUTERS
<アクセス・エージェントは多くの場合ビジネスパーソンで、正当な業務の一環として有力な人脈と接触する機会を持つ>
情報機関とその周辺に広がる秘密の世界は不透明だ。
エプスタイン文書の公開により、故人となった性犯罪者のジェフリー・エプスタインがいずれかの大手情報機関に便宜を図っていたのではないか、という憶測が浮上している。
たとえば、エプスタインの元交際相手ギレーヌ・マクスウェルの父は1950年代から1990年代初頭にかけて英国で著名なメディア経営者として知られた故ロバート・マクスウェルだ。彼もスパイ活動に関与していた疑いがある。
エプスタインは性的人身売買ネットワークを通じて有力者に少女の売春を斡旋し、マクスウェルは従業員の年金基金を流用したことで知られるようになった。
二人の事例は、情報機関と巨大金融資本、そして権力の力学を浮き彫りにしている。
国家による情報収集に関与する人々は、一般に3つの大きなカテゴリーに分けられる。「オフィサー」は英国の対外情報機関MI6のような国家情報機関にフルタイムで勤務する職員だ。
オフィサーは、「エージェント」と呼ばれる協力者のグループを運営する。エージェントは国家に正式雇用されているわけではないが、意図的かつ自覚的に情報を収集し、情報担当官のために任務を遂行する。
さらに、情報機関にとって有益な情報源となる「インテリジェンサー」と呼ばれる人々がいる。彼らは情報機関にとっての「アセット(資産)」と呼ばれることもある。
人から情報を得るタイプの諜報活動でものを言うのは、アクセスと知識、そして公職者や有力者の弱みを握る力だ。
情報機関が外国の機密を入手する際は、その国の機密情報を扱う立場にあり、かつ裏切る動機を持つ人物を直接勧誘する方法もある。
旧ソ連に情報を流していたCIA局員オルドリッチ・エイムズや、第二次大戦後、英国原子力機関から旧ソ連に情報提供をしていたメリタ・ノーウッドがそうだ。
しかし情報機関は同時に、「アクセス・エージェント」と呼ばれる存在の獲得にも強い関心を持っている。
アクセス・エージェントとは
アクセス・エージェントの価値は、自らが機密に直接アクセスできることではなく、機密を持つ人への橋渡し役ができることにある。
上流社会や科学、金融、政治、文化の世界は、機密を握る中枢と、その周辺で人脈を築く媒介者が混在する空間だ。アクセス・エージェントは後者に属し、前者への橋渡し役となる。
情報機関がアクセス・エージェントを使う最大の利点は、関係が発覚しても協力関係を否定でき、しかも存在が表に出にくい存在という点にある。
情報活動に従事する者には、資金、移動の自由、そしてもっともらしい経歴(「レジェンド」と呼ばれる)が必要だ。
本職のスパイではないマクスウェルやエプスタインのような実業家は既にその3つを豊富に備えており、理論上は情報機関のニーズに応えうる存在だった。
アクセス・エージェントは多くの場合ビジネスパーソンであり、ときに研究者やジャーナリストでもある。正当な業務の一環として移動し、有力な人脈と接触する機会を持つ。
英国の中枢に長年潜伏し、ソ連に機密情報を提供していたスパイグループ「ケンブリッジ・スパイ網」で最も悪名高いキム・フィルビーは、MI6のオフィサー(そしてソ連の二重スパイ)としての経歴を始める前、スペイン内戦中に従軍記者として活動していた。
イアン・フレミングやジョン・ル・カレのスパイ小説のモデルになったオーストラリア人記者リチャード・ヒューズも、1960〜70年代の東南アジアの激動期に英国情報機関のために活動していたと信じられていた。
おそらく最も有名な実業家スパイはシリル・バートラム・ミルズだ。バートラム・ミルズ・サーカスのディレクターであると同時に、第二次世界大戦前後の約40年間、英国情報機関に関与した。
サーカス団員を発掘するためとしてヨーロッパ各地を巡りながら、1930年代のドイツ再軍備に関する証拠を上司に提供した。
また、最も成功した二重スパイの1人である「ガルボ」をリクルートし、Dデーの上陸地点はノルマンディーではなくカレーだとドイツ側に思わせる工作に重要な役割を果たした。
アクセス・エージェントは「情報提供者にとって欠けている友人になる」よう訓練される。有用な内部情報、重要人物への紹介、性的関係、あるいは事業資金など、接触相手が強く望んでいながら入手できないものは何でもだ。
英国の国内情報機関MI5はウェブサイトで次のように明言している。「エージェントは、信頼関係や立場を利用して機微な情報を入手する。また、機密を扱う人物の弱点を探ることもある」。
秘密と嘘
情報の世界で真実を見極めるのは容易ではない。その人物が本当に情報活動に関わっていたのか、またその行為が正当で効果的だったのか、決定的証拠が示されることはほとんどない。すべてが秘密と憶測に包まれているからだ。
マクスウェルの場合、歴史研究やテレビドキュメンタリーが未確認のヒントを提示してきた。
エプスタインについては、いくつかの状況証拠がある。その一つが、元米国連邦検事アレクサンダー・アコスタの証言だ。アコスタは、エプスタインの司法取引を交渉した際、エプスタインは「情報機関に属している」と聞かされたと主張している。
しかし、いずれについても真実が明らかになる可能性は低い。
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Robert Dover, Professor of Intelligence and National Security & Dean of Faculty, University of Hull
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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