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<COP26きょう開幕>「2025年ネットゼロ」「30年ネットネガティブ」を目指すスコットランドの酪農家に学ぶ逆転の発想
「モスギール有機酪農場」を経営するブライス・カニンガムさん(筆者撮影)
<地球の運命を決めるCOP26がスコットランドのグラスゴーでいよいよ始まる。「脱石炭」さえ決断できない日本の背中を押すような各国政府や企業の取り組みを追う>
[英スコットランド・グラスゴー発]「2025年にネットゼロ(温室効果ガス排出量を正味ゼロにすること)、30年にはネットネガティブ(温室効果ガス排出量より回収量を多くすること)を達成する」――英北部スコットランドのグラスゴーから車で南へ40分弱の「モスギール有機酪農場」を経営するブライス・カニンガムさん(34)は目を輝かせた。
岸田文雄首相は総選挙の開票を見届けてグラスゴーで開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合に出席。東日本大震災の福島原発事故で石炭依存度を強めた日本は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会(気候変動の緩和)報告書の書きぶりを変えようと圧力をかけていることが環境団体によって曝露された。
瑞々しいスコットランドの酪農場でカニンガム氏の話に耳を傾けていると、「脱石炭」を決断できない日本の政官財があさましく見えてくる。祖父、父と続く酪農家に生まれたカニンガムさんは家業には全く興味がなく、16歳の時、ドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツでエンジニアの実習生として働き始めた。
2013年、祖父と父がともに体調を崩し、酪農場を手伝うため実家に戻る決心をした。祖父と父は相次いで亡くなり、15年、牛乳価格の暴落で酪農業全体が危機的状況に陥った。「1日20時間働いたが、牛乳が値崩れして一時、事実上の廃業に追い込まれた。非常にアンフェアと感じた」と振り返る。
牛乳1リットルの報酬23円という生き地獄
銀行が融資を引きあげたため、ほとんどの乳牛と農業機械、わずかに所有していた土地を売らざるを得なかった。「牛乳1リットルにつき得られる報酬はたった15ペンス(23円40銭)。これでは酪農家は1カ月につき1万ポンド(156万円)の赤字だ。これではとても持続できない、1年後に酪農を続けていられるとは思わなかった」とカニンガムさん。
モスギール酪農場ではかつて、スコットランドの詩人ロバート・バーンズ(1759~1796年)が働いていた。バーンズは『蛍の光』の原曲の作詞で日本でも知られる。「ここにバーンズがいたんだ」と思うこともあるカニンガムさんは、大型スーパーや加工業者のサプライチェーンから離脱しない限り「底辺への競争」から逃れられないと気づいた。
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