コラム

欧州でロシアの工作活動が冷戦期並みにエスカレート 

2021年08月13日(金)15時03分

――どのように対策を強化すべきですか

「英政府は治安対策をより真剣に受け止める必要がある。治安の提供はすべての政府の主要な義務であり、マーガレット・サッチャー英首相が言ったように政府がしなければならない数少ないことの1つだ。にもかかわらず、ジョンソン首相はあらゆる面で治安を真剣に受け止めていないという印象を与える」

「 1年前、ジョンソン首相は多くの治安委員会の会議に出席しなかった。19年12月以降、治安担当閣外相は置かれていない。彼は自分の携帯電話番号にも注意を払っていなかった。イギリスのEU離脱は間違いなくイギリスの治安を低下させた。イギリスは欧州逮捕状、欧州刑事警察機構(ユーロポール)などEUとの治安の取り決めからも離脱してしまった」

「ロシアのスパイや悪党をイギリスから遠ざけることはできない。もちろんハッキングは重要な諜報活動のツールだ。国家機密は多くあるが通常、機密の中でもトップシークレットは生身のオフィサーが運用する生身のエージェントを使うことによってのみつかむことができる」

――欧州大陸でどのようなスパイ活動が行われているのですか

「誰もが他のすべての人をスパイしている。EU離脱により、以前のEUのパートナーに対するイギリスのスパイ活動は増加するだろう。EUのパートナーもそれを知っており、イギリスにとってプラスにはならない」

――中国はどうですか

「中国はアジア太平洋の脅威だ。ロシアは欧州の脅威だ。ロシアははるかに暴力的で無謀でとらえどころのない危険だ。権威主義的、全体主義的体制は日本を含むすべての自由民主主義にとって常に脅威となる」

――日本にとっての教訓は何ですか

「警戒を怠らず、ガードをさらに強化することだ。日本はドイツと同じように、諜報活動を行うのは問題と考える歴史的な理由がある。しかしドイツ人が行ったように、こうした歴史を乗り越える必要がある。大学でインテリジェンス研究を発展させ、何をしているのか一般市民がより理解できるようにしなければならない」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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