コラム

五輪強行の一方、コロナ対策では菅政権の周回遅れ感が半端ない

2021年08月04日(水)17時46分

「死者も少なく、入院患者の生存率が高くなり、入院日数も2日ほど短くなっている。入院患者の年齢層が下がってきて、30~40歳代が増え、3歳の子供もいた。亡くなっているのが80~90歳代で、たまに70歳代という感じ。入院してくる若い層はワクチン未接種か1回接種の人が多く。高齢者層は2回接種しているものの2回目が半年前だ」(NHS関係者)

このためイギリスではワクチン効果は半年で薄れる可能性があるとみて、9月から3回目のワクチン接種を展開する。

このNHS関係者は「全面正常化したのは良いのだが、感染防止のためのマスク着用や社会的距離、手洗いは続けてもらわないと。ワクチンが全員に回っているわけではない。若い層の回復率は高いが、ロング・コビットと呼ばれる後遺症がかなり残る」と指摘する。正常化してもコロナ危機は決して終わったわけではないのだ。

田村厚労相「在宅で酸素吸入も」

日本では、コロナ感染症は症状によって(1)軽症(血中酸素濃度96%以上)(2)中等症Ⅰ(同93%超96%未満、息切れ、肺炎の所見、抗ウイルス薬投与を考慮)(3)中等症Ⅱ(同93%以下、呼吸不全あり、ステロイドや適応外薬のリウマチ薬の投与を検討、人工呼吸器装着を考慮)、重症(重症肺炎、ICUで人工呼吸器管理、ECMO実施)に分類される。

無償で医療を提供するNHSでは血中酸素濃度の正常値は96%以上とされ、2回測定していずれも92%以下だったらすぐに病院の救急外来に駆け込めとアドバイスしている。中等症でも血中酸素濃度が93~94%なら入院を検討するとガイドラインには記されているが、血中酸素濃度が低くなくても医師が患者の状態を診て、入院するかどうかを決めているという。

とにかく呼吸障害が出たら、酸素吸入を一刻も早く行う必要がある。入院が必要ないとされる軽症でもコロナは若い人にとっても相当きつい。体温は40度近くまで上昇し、嘔吐したり光や音が辛く感じたりする。筆者の友人の30歳代日本人女性は3週間寝込んで体重が4キログラム減った。

菅首相は2日、首相官邸で新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する関係閣僚会議を開き、感染拡大地域では「重症患者や重症化リスクの高い人が確実に入院できるよう必要な病床を確保する。それ以外の方は自宅療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」方針を打ち出した。

これまでは中等症や軽症の患者でも入院の対象だったが、重症患者や重症化リスクの高い人の病床を確保するため、田村憲久厚生労働相は3日の閣議後会見で「(中等症でも)比較的軽い方は在宅をお願いしていく。場合によっては在宅で酸素吸入することもありえる」との認識を示した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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