コラム

英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メーガン妃の野心

2020年01月11日(土)14時09分

93歳と高齢になったエリザベス女王に代わって他の王族に公務が振り分けられている。2人のウエブサイトを読むと王室の公務も含め、仕事は自分で決めると宣言しているようにも聞こえる。今後、公務やこれまで関わってきた慈善活動をどうするのか定かではない。

ソブリングラント以外の、チャールズ皇太子のコーンウォール公爵領の利益からくる残り95%の公費、最大6人の警察官による警護、フロッグモア・コテージで暮らす特権を手放すつもりはないと明言している。

「サセックスロイヤル」のインスタグラムのフォロワーは1040万人。2人はこの2~3週間で衣服、書籍、雑誌に至るまで100以上の「サセックスロイヤル」ブランドを商標登録した。アーチーちゃんにスポットライトを当てれば世界一のライフスタイルサイトになるのは間違いない。

2人はメディアの選別でパブリシティ権を独占するつもりだろう。スピーチ料も1回最大で50万ドル(約5500万円)は見込める。アメリカの著名女性パーソナリティー、オプラ・ウィンフリー氏とメンタルヘルスをテーマにしたTVドキュメンタリーシリーズの制作も計画している。

メーガン妃は英王室の知名度を利用して"第二のカーダシアン家"、自己プロデュース能力で年収52億円を稼ぎ出すスーパーセレブでも目指そうというのか。英王室伝統のプロトコルに精通しているウィリアム・ハンソン氏は筆者にこう語る。

MAS_2835.JPG
ウィリアム・ハンソン氏(筆者撮影)

「王室メンバーの活動は今と同じように慈善活動に限られなければならない。だが、サセックスロイヤルのアディダスやインスタグラムとの金銭の支払いを伴うパートナーシップを見る限り、警戒警報が鳴り始めている。商業主義に走れば人々の共感は失われる」

王室のイメージに傷

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校でマーケティングを専門にするポーリーン・マクララン教授も筆者に指摘した。

「彼らは自身の独立したブランドを確立しようとしているが、多くの問題を引き起こすだろう。 彼らは本質的に王室ブランドを拒否し、独自ブランドを立ち上げようとしている。しかしそのブランドがロイヤルファミリーのイメージとブランドにどのようにフィットするのか」

「彼らが王室の称号を商業的利益のために使用していると認識された場合、利害が衝突する恐れが極めて高い。 彼らが称号を放棄しない限り、王室にとって非常に難しい問題になり、王位のイメージをひどく損なう危険がある」

「 今後数日間、何が交渉されるかを見守るのは非常に興味深い。 私の推測では、エリザベス女王とチャールズ皇太子は一定の義務を保ちながら一定の独立性に同意することで何らかの形でコントロールを取り戻そうとするだろう」

ヘンリー王子と王室ブランドを利用しようとするメーガン妃はこともあろうか、カナダで高みの見物を決め込んでいる。

20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米が防衛費3.5%要求、日本は2プラス2会合見送り

ビジネス

焦点:米で重要鉱物、オクラホマが拠点に 中国依存脱

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ナスダック下落、中東情

ビジネス

NY外為市場=ドル/円3週ぶり高値、中東への米関与
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story