コラム

「環境ポピュリスト」小泉進次郎は、楽しくもセクシーでもない温暖化対策の現実を語れ

2019年09月24日(火)16時25分

原子力のみでなく、火力発電も抑えた上で需用電力量をどう賄うかが小泉環境相の課題だ Issei Kato-REUTERS

[ロンドン、東京発]小泉進次郎環境相(38)が22日、出張先のニューヨークで華麗な外交デビューを果たした。共同会見で「気候変動のようにスケールの大きな問題に取り組むためには、楽しくかつクールで、しかもセクシーでなければならない」と述べたが、「セクシー」という言葉遣いが早速、国内で物議を醸している。

身内で結婚式を挙げたばかりのフリーアナウンサー、滝川クリステルさん(41)は2020年東京五輪・パラリンピックを射止めた「おもてなし」のプレゼンテーションで一躍、時の人になっただけに、小泉氏がアドバイスを求めていたとしても何の不思議もない。

「金曜日の学校スト」で今や気候変動と闘うシンボルになったスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)は国連で「あなたたち大人は私の夢を、空虚な言葉で私の子供時代を奪っている。それでも私はまだラッキーだ。多くの人々が苦しみ、死んでいる。私たちの生態系は朽ち果てている」と演説し、喝采を浴びた。

世界の潮流に逆らう日本の温暖化対策

日本の地球温暖化対策は世界から全く評価されていないどころか、問題視されている。「失われた20年」の間、日本では経済成長が優先され、東日本大震災の福島第一原発事故で現在、稼働中の原発は9基にとどまる。化石燃料の石炭、液化天然ガス、石油を使った火力が電気事業者の発電電力量の4分の3強を占める。

環境NGO気候ネットワークの調査では、2012年以降明らかになっていた国内50基の石炭火力発電所の新設計画のうち13基が計画中止となった。「反原発」のあおりで温暖化効果ガスを吐き出す石炭火力発電所が新設されるのは、はっきり言って世界の潮流に逆行している。

国連総会のため渡米した安倍晋三首相に対しては石炭のバケツから登場する安倍首相のデコレーションが計画される中、ロイター通信は小泉氏の「セクシー」発言を好意的かつ肯定的に伝えた。

「日本の新しい環境相が気候変動に対する闘いを『セクシー』かつ『楽しく』することで若者を動員し、石炭に依存する祖国を低炭素の未来に向かわせると誓った」(ロイター通信)。

小泉氏の発言内容についてはこう報じている。

「政治には非常に多くの課題があり、時に退屈だ。気候変動のようにスケールの大きな問題に取り組むためには、楽しくかつクールで、しかもセクシーでなければならない」

「私たちは脱炭素化社会を実現することに専心している。日本は気候変動との闘いにより強力な国として貢献する用意がある」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、鉄鋼生産抑制へ対策強化 電炉や水素還元技術を

ビジネス

米総合PMI、10月は54.8に上昇 サービス部門

ビジネス

米CPI、9月前月比+0.3%・前年比+3.0% 

ワールド

加との貿易交渉「困難」、トランプ氏の不満高まる=N
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story