コラム

国民統合へ手腕を発揮するフランスのマクロン大統領 国民議会選も第1党の勢い

2017年05月17日(水)16時00分

kimura20170517115002.jpg「前進!」ロンドン支部長のピエール・マーク Masato Kimura

5月15日時点でマクロン新党は577選挙区のうち511人の擁立を済ませた。男性候補256人に対し、女性候補255人と男女格差を解消した。国民議会議員の平均年齢は60歳だが、マクロン新党は46歳と大幅に若返った。政治家としての経験がない候補者も半数を超えている。マクロンは淀んだフランスの政治に新風を吹き込んだ。

若きエリートたちが支持

昨年11月、正式に大統領選への出馬を表明してからわずか半年。マクロンを大統領に押し上げたチームを見ると、マクロンと親しい若きエリートを中心に、ビジネス界の要人、政界のベテランがバランスよく配されている。ジーンズとTシャツでガレージから起業するアメリカと違って、マクロンによる政治のスタートアップはビジネススーツが良く似合う若きエリートたちによって主導された。

ロンドンでの3千人集会を組織した23歳のピエール・マークは事務弁護士としての実習中。「右と左の政治には飽き飽きした。変化が必要だ」と昨年5月に「前進!」に参加し、ロンドン支部長を務めた。

「マクロンはみんなを包み込むフランスを実現しようとしている。政治的な違いを乗り越えようとしている。ブレグジット(イギリスのEU離脱)のあと、フランス国民は、危機に瀕死するEUこそ祖国を守ってくれることに気づいた。マクロンはEUを防衛すると同時に改革も求めている」

「フランス国民は自分自身と祖国の未来について楽観的になってきた。そうなると経済も良くなる。マクロンは機会をつかもうとする者に機会を与える一方で、弱きを助けようとしている。マクロンは分断されたフランスを癒そうとしている。敵対を望んでいない」

【参考記事】フランスに「極右」の大統領が誕生する日

「マクロンを選んだ祖国を誇りに思う。わが国はポピュリズムに屈するのを拒んだ。マクロン大統領はフランスを変革する。フランスは前向きに、建設的に生まれ変わる。私は祖国に帰って祖国の再建に貢献したい」

【参考記事】マクロン新大統領の茨の道-ルペン落選は欧州ポピュリズムの「終わりの始まり」か?

既得権がはびこり、硬直化したフランスに嫌気が差してロンドンに逃れてきたフランス人は30万人に達すると言われている。そのうち何人がピエールと同じように祖国に戻るのだろう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story