コラム

李在明候補の格差是正策は、ベーシックインカムにとどまらない

2021年11月09日(火)19時21分

彼は京畿道の城南市長に在任していた2016年に城南市に居住している満24歳のすべての若者に四半期ごとに地域通貨で25万ウォン(約23,932円、為替レートは2021年11月9日の1ウォン=0.095728円、以下同じ)を年4回(計100万ウォン、約95,728円)を「青年配当」という名前で支給した。また、2018年6月に京畿道知事に当選した彼は2019年から京畿道の24歳のすべての若者に「青年基本手当」を支給する政策を行った。さらに2020年5月には新型コロナウイルス感染症に対する緊急経済対策として、京畿道に居住しているすべての人(外国人を含む)に一人当たり10万ウォン(約9,573円)の第1次災難支援所得を支給した。

彼は、番組で今後、「青年基本手当」の適用対象を京畿道のすべての住民を対象に拡大した後、将来的には韓国国内のすべての人々に定期的に一定金額の手当を支給したいという意向を明らかにした。具体的には最初は1年に2回程度、すべての国民に一定金額を支給した後、段階的に支給回数や支給金額を増やし、将来(10~15年後)には増税分を財源に一人当たり実質月50万ウォン(約47,864円)程度の基本所得を支給することが望ましいと主張した。2019年の人口約5200万人を基準に計算すると、基本所得を導入するための必要財源は年間312兆ウォン(約29.9兆円)にのぼる。この金額は韓国政府の2021年予算558兆ウォン(約53.4兆円)の約56%に該当する規模である。

李在明氏は、基本所得を実現するために次々と関連政策を実施しており、2021年2月には京畿道に居住しているすべての人(外国人を含む)を対象に一人当たり10万ウォン(約9,573円)のコロナ関連第2次災難支援所得を支給した。さらに2021年10月には韓国政府の5回目の災難支援金(コロナ相生国民支援金、所得下位88%の韓国国民に1人当たり25万ウォン、約23,932円)が受給できなかった人に1人当たり25万ウォンを支給する第3次災難支援所得の申請を受け付けた。

李在明氏は2021年6月5日、自分のFacebookに「大韓民国は福祉後進国だ。(中略)基本所得の導入は福祉先進国ほど難しく、大韓民国のような福祉後進国で導入することがより簡単だ」と意見を示した。

但し、彼の主張に対して野党のみならず、与党からも批判の声が高い。その内容は次の通りだ。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ外相、キーウ攻撃を非難「結果なしには済まされ

ワールド

ロシアがキーウに大規模攻撃、15人死亡 EU代表部

ワールド

欧州新車販売、7月は昨年4月以来の大幅増 BYDが

ワールド

アングル:英国で広がる「国旗掲揚運動」、反移民気運
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 6
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 7
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story