コラム

なぜ、韓国政府はGSOMIAを破棄したのだろうか?

2019年08月27日(火)17時50分

韓国軍が独島(島根県・竹島の韓国名)で行った独島防衛訓練(8月25日)  South Korean Navy/REUTERS

<日本によるホワイト国除外で韓国経済がいかに大きく日本に依存しているかを知った韓国では、このままではまた植民地化されてしまうのではないかという恐怖がよぎった。それが、破棄の理由の1つだ>

2019年8月22日、韓国政府は日韓防衛当局間で軍事機密のやりとりを可能にするGSOMIA(軍事情報包括保護協定(以下、GSOMIA))を継続せずに破棄すると発表した。そして、8月23日には長嶺安政駐韓日本大使を呼び、日本とのGSOMIAの破棄を通告した。その結果、2016年11月から3年にわたって続いてきた日本と韓国の間の軍事的な協力関係は、今年の11月をもって解消されることとなった。なぜ、韓国政府はGSOMIA破棄という極端な選択をしただろうか。

GSOMIAとは

GSOMIAとは英語のGeneral Security of Military Information Agreementの頭文字をとったもので、日本語では「軍事情報包括保護協定」と訳する。GSOMIAは、国家間で安全保障に関する情報を共有・保護するための協定であり、2016年に日本と韓国の間で初めて締結された軍事協定である。

日韓の間でGSOMIAが本格的に議論され始めたのは2012年李明博元大統領の時代で、同年6月には協定目前まで至ったものの、直前になって韓国側の都合により延期された。その後2016年、朴槿恵前大統領の時代に北朝鮮の核実験と長距離弾道ミサイルの実験が続く中で、韓国と日米間の安全保障に対する共助の必要性が重視された上に、アメリカが協定締結を積極的に支持したことにより、日韓政府はGSOMIAに対する交渉を再開することになった。

日本とのGSOMIAの推進に対しては野党を中心に反対の声も強かったものの、日韓政府は交渉を続け、同年11月23日に日韓の間でGSOMIAが締結された。その結果、同時点で韓国は33カ国と、一方、日本は7カ国とGSOMIAを締結することになった。

日韓がGSOMIAを締結することにより、締結前は米国を介して両国の情報(主に北朝鮮の核・ミサイルに関する情報)を共有していたものの、締結後は直接のやりとりが可能となった。協定は総21条項で構成されており、日韓政府が軍事秘密を共有する内容などを定めている。韓国側は北朝鮮のミサイル基地、潜水艦などに対して、白頭偵察機や金剛偵察機、そして脱北者から収集した情報を提供する。一方、日本側は情報収集衛星や海上哨戒機、そして高性能レーダーやイージス艦から収集した同レベルの情報を提供する。協定を締結してから現在に至るまで両国の間で25回以上、情報を共有したと知られている。

日韓の間のGSOMIAの有効期間は1年で、期限の90日前に当たる毎年8月24日までに一方が破棄を通告しない限り、毎年自動的に延長される仕組みとなっている。しかしながら、8月23日に韓国外交部が、長嶺安政駐韓日本大使を呼び、日本とのGSOMIAの破棄を通告したことにより、3年にわたって続いてきた日韓の軍事的な協調関係は、通告から3カ月後の11月をもって解消されることとなった。

kim190827_1.jpg

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシアルピアが最安値更新、中銀の独立性巡る懸

ビジネス

NYSE、24時間対応のトークン化証券取引プラット

ビジネス

中国の大豆輸入、米国シェア15%に低下 南米産にシ

ワールド

ベトナム共産党大会、ラム書記長が演説 経済成長10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 4
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story