コラム

医薬品への「トランプ関税」には、これまでとは全く違う意味が...産業保護ではない「狙い」とは?

2025年07月25日(金)17時21分

コストがかかっても安全保障リスクを低減

確かにアメリカの製薬業界は世界トップの競争力を持っているが、言い換えれば、価格が安く付加価値の低い薬は国外から輸入し、自国企業は高付加価値製品に特化しているとも言える。仮に有事になった場合、付加価値が低いとはいえ、一部の薬が入手できない可能性が否定できない。

輸入医薬品に高関税をかければ、アメリカの製薬メーカーは安価な薬も含めて自国生産比率を上げざるを得なくなる。トランプ政権はこれによって国民の命綱となる医薬品の大半を国内供給で賄いたい方針と考えられる。


銅も似たような状況と言える。アメリカは、銅鉱石は自給できる状態であるものの、工業製品の原料となる銅地金についてはコスト的な面から輸入している。トランプ政権としては多少、コストがかかっても自国で生産できるものは国内で作り、安全保障上のリスクを低くすべきという考えになる。

一般的に関税というのは国際競争力が低い国内産業を保護するために実施されるケースが多いが、今回のように高い競争力を持つ製品についても関税をかけることになれば、世界経済のブロック化が進む可能性が高まってくる。アメリカが内向きな姿勢を強めれば、欧州各国や中国も対抗措置を取らざるを得なくなり、各地域が生存に必要となる戦略物資を自国で調達する流れが加速するだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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