コラム

インフレと金利上昇で揺れる不動産市場...「持ち家」「賃貸」論争に変化の兆し?

2024年08月30日(金)14時00分

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中国では21年に大手の恒大集団が経営危機に陥った ANDREA VERDELLIーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

中国の場合、不動産バブルが崩壊したとはいえ、実体経済はまだ成長を続けている。バブル崩壊で資金繰りに窮する企業が出てくる一方、余剰マネーが行き場を失った状況にあり、上海など都市部の高級物件は再び上昇に転じているとの情報もある。経済の先行きに対する不透明性が高いことが、逆に不動産という安全資産獲得のインセンティブになっている図式であり、不動産にマネーが集中しやすい状況はあまり変わっていない。

総合的に世界の不動産市況について考えた場合、日本はもちろんのこと、全世界的に不動産にマネーが集まっており、当分の間、不動産価格の上昇が続く可能性が高い。世界経済の機関車となってきたアメリカ経済には鈍化の兆しが出てきているものの、中東情勢が悪化していることから原油価格は再び上昇に転じるとの予想もある。今後もインフレ傾向が続くということであれば、仮に不動産市況が悪化しても、中国のように一旦は下落に転じるものの、それなりの価格で市場が推移する可能性も十分にある。


「持ち家」「賃貸」論争に変化

日本国内においては、物件価格の上昇が急ピッチであるという現実を考えると、今年の後半から来年にかけては賃貸物件の賃料上昇が顕著になると予想される。物件価格が20年で1.5~2倍に上がったことを考えると、賃料が従来と同じでは投資家の採算が合わなくなってしまう。

これまで「持ち家」か「賃貸」かという議論は、永遠の神学論争のように扱われてきた。実際、持ち家を購入する行為と賃料を払って物件を借りる行為は、経済学的には全く別の範疇(はんちゅう)に入るものであり、どちらが得かということを同じ次元で比較することはできない。

しかしながらインフレが継続することを大前提にするならば、物件価格のみならず家賃も確実に上がっていく。以前と比較して、持ち家取得のメリットが大きくなっているのは間違いないだろう。

日本の場合、人口減少によって不動産市場が二極化しているという現象も見られる。都市部の利便性の高い物件に人気が集中し、郊外や地方の物件は、価格を下げても売れないといった状況があちこちで散見されるようになってきた。

不動産の取得については、日本の人口動態や自身のライフプラン、さらにはマクロ経済の動向などを総合的に考えた上で検討していく必要があるだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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