コラム

日本の「経常赤字」は常態化する、そしてこれはチャンスに変えられる

2022年05月11日(水)20時00分

外資メーカーTSMCの誘致を成功例にせよ

経済学の基本理論である貯蓄投資バランス論では、国民の貯蓄は設備投資と財政赤字、経常黒字で案分される。日本の財政赤字が減る見込みは薄く、この状態で経常収支が悪化すると、貯蓄率の低下が予想される。経常赤字と成長率鈍化は直接関係しないものの、今のままでは国内の貧困化がさらに進むとの予想にならざるを得ない。政府の財政もより厳しい状況に追い込まれるだろう。

経常収支が赤字になれば、必然的に海外から資金を借り入れることになる。海外依存が不可避なら、投機的な資金ではなく、長期的な優良資金を受け入れるための工夫が求められる。

政府は世界有数の半導体メーカーである台湾TSMCの工場を熊本に誘致することに成功したが、今後はこうした事例を増やしていく必要がある。海外の優良企業に投資してもらうことで資金不足をカバーし、同時に円安で割安となった労働力を活用すれば雇用と賃金を増やせる。海外資金を呼び込んだ場合、利子や配当を支払う必要があるが、高い賃金を払ってくれるのなら、それが外資であっても十分にお釣りがくるはずだ。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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