コラム

矢野事務次官・論文で再燃した「財政破綻」論争は根本的に間違っている

2021年10月26日(火)16時58分

日本の税収は約60兆円しかないので、半分が利払い費で吹き飛ぶ計算であり、これをカバーするには際限なく国債を発行するか、予算を大幅削減するしか選択肢がなくなる。しかも金利が上昇することは、国債の市場価格が下がることを意味するため、国債を大量保有する日銀には損失が発生する。時価評価せずに償還まで待ってごまかしたとしても、額面よりも高く買った国債については償還時の損失計上が避けられない。

この状態を不安視して銀行が日銀当座預金から資金を引き出せば、市中に大量の現金があふれ、たちまちインフレになるし、それを防ぐには高い金利を付与するしかなく、巨額の国民負担が必要となる。「日本の財政は破綻するか」と聞かれれば「その可能性は極めて低い」との回答になるだろうが、一方で金利上昇というのは目の前にあるリスクである。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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