コラム

目先の利権を優先してきたインフラはもう限界...日本人が知らない大問題

2021年06月23日(水)18時41分
水道の蛇口

LISAVALDER/ISTOCK

<水道料金は43%の値上げが必要との調査結果が出たが、このショッキングな結果はインフラ問題の氷山の一角でしかない>

各地域の水道料金が近い将来、平均で43%の値上げが必要になるというショッキングな試算が出ている。今後、日本では急激に人口減少が進む一方、高度成長期に整備したインフラの更新費用が重くのしかかる。

試算を行ったのはEY新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構で、将来の人口推計や各自治体の減価償却費の推移などを基に、2040年時点において水道事業が赤字にならないための料金について算定した。それによると、全体の94%の自治体で値上げが必要であり、18年を起点とした値上げ率の平均は43%にも達する。

現時点(18年)における水道料金の全国平均(平均的な使用量の場合)は月額3225円だが、43年には4642円になる計算だ。人口が少ない自治体ほど、人口密度が低い自治体ほど値上げ率が高くなる傾向が顕著となっており、特に北海道と東北の値上げ率が高い。

当たり前のことだが、人口が減少すれば水道の料金収入が減少する一方、設備を維持するための費用は当面、変化しない。今のサービス水準を継続するなら、結果として料金を上げざるを得ないという理屈だ。

こうなることは容易に予測できた

だが、それにしてもなぜ今のタイミングで、急激な値上げが必要という話になっているのだろうか。直接的な原因は人口減少による減収と高度成長期に整備したインフラの更新費用増加だが、この2つのファクターは決して不可抗力ではない。

人口動態は数ある統計の中でも、最も将来予測が容易なものの1つであり、日本の人口が減少に転じることは30年以上も前から分かっていたことである。またインフラの更新費用も建設した時点で将来予測が可能であり、当初からそのコストを料金に織り込むことができたはずだ。

厚生労働省が09年に行った調査によると、全国の水道インフラを法定耐用年数で更新した場合、更新費用は年平均で1.4兆円に達し、09年の実績値を大きく上回っている。逆に言えば、当初から設備の更新を考慮に入れた料金体系にしていれば、急激な値上げを回避できた可能性があることを物語っている。

インフラというのは必ず劣化するものなので、減価償却を設定し、当該分だけ更新費用を確保できなければ継続利用は不可能である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 7
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 8
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story