コラム

バイデンも、トランプと同じ保護貿易主義者? 自国優遇政策の狙いとは

2021年02月24日(水)12時15分

REUTERS/Issei Kato

<米バイデン政権の「バイ・アメリカン政策」強化と脱炭素シフトは、経済にどれだけの影響をもたらすのか>

アメリカのジョー・バイデン新大統領が、政府調達において自国製品を優先するバイ・アメリカン政策の運用を強化する大統領令に署名した。加えてバイデン氏は脱炭素シフトを実現するため、事実上の関税である国境炭素税の導入も検討しているという。

アメリカ社会は政権にかかわらず内向きになっており、年々、保護主義的傾向を強めている。このままでは、アメリカ市場を主戦場としてきた日本の製造業にとって致命的な事態となりかねない。

米政府の年間予算規模は4.7兆ドルに達するが、物品などを購入する政府調達は約6000億ドル程度といわれる。

バイ・アメリカン政策は、政府調達や政府が財政支援するプロジェクトにおいてアメリカ製品の購入を優先するもので、1933年に成立したバイ・アメリカン法(ハーバート・フーバー大統領の任期最終日に署名された)や、バラク・オバマ政権下の2009年に成立した景気対策法におけるバイ・アメリカン条項などを根拠とする。

連邦政府の調達規則では、バイ・アメリカン政策に従う場合、価格ベースで自国製品や自国資材を50%以上にすることを求めているが、この比率を上げてアメリカ製品の調達を増やす。また例外適用についての判断基準も厳格化するという。

国境炭素税の導入も検討か

民主党はもともと労働組合が支持母体であり、時に保護主義的な政策によって雇用維持を図ることがあるので、これはある程度、予想された事態と言ってよい。バイデン氏自身は自由貿易論者といわれ、本来なら過度な保護主義には走らないはずだが、今回は少し様子が違う。バイデン氏は脱炭素シフトを重要な政策に掲げており、国境炭素税の導入まで検討しているからだ。

国境炭素税とは、脱炭素を促すため環境規制が緩い国からの輸入品に税金を課すもので、EUが既に導入を表明している。だが、この税金は事実上、特定の国を対象とした関税そのものであり、本来ならWTO(世界貿易機関)の協定違反となりかねない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数は横ばいの21.3万件、労働

ワールド

イラク海域のタンカーで小規模爆発、イランが遠隔操作

ワールド

情報BOX:米・イスラエルのイラン攻撃後の中東にお

ワールド

米ウクライナ、3者協議延期・開催地変更を検討=ゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 8
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story