コラム

日本史上初めての中国人の大量移住が始まる

2025年04月26日(土)14時30分

銀座の店舗の前で歩道に座り込む中国人旅行客のグループ TOMOHIRO OHSUMI/GETTY IMAGES

<アメリカとの関税戦争で追い込まれた中国から、まず地位とカネを持った者たちが国外に流出する>

アメリカが中国を追い込みすぎているようだ。2000年代以来、西側のカネ(貿易黒字と直接投資)と技術で急成長した中国。その双方の栓を閉めようというのだから、習近平(シー・チンピン)政権が感じる危機感は並大抵ではない。昨年、中国への外資の直接投資は前年比9割減の45億ドルに激減している。戦前の日本はアメリカに追い詰められ、「このままではじり貧。やるなら今しかない」と、成算もなしに真珠湾を攻撃。実質的に国を失っている。

中国人は冷静(現金)だから、台湾を攻撃することはするまい。失敗すれば「国を失う」、つまり習政権、もしかすると共産党支配そのものの瓦解につながると知っているからだ。


それでも中国が危機の時、政権の足元の砂は、津波を前にした岸辺のように、どんどん流れ出していく。つまり、まず地位とカネを持った者たちが、国に見切りをつけて国外に流出する。

中国人の国外流出。それは史上、何度も起きている。明が異民族の清に代わった時には、明王朝のエリート、そして商人たちは東南アジアに移住(亡命)したし、アヘン戦争後の混乱期には沿岸地域の貧困層が大勢、下層労務者(クーリー)としてアメリカや東南アジアに売られていった。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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