コラム

中国とロシアの「権威主義同盟」は世界を変えるのか

2023年03月14日(火)14時30分

西側諸国がロシアの石油・ガス輸入を停止しても中国がそれを吸収する、という声もある。しかしEUの輸入量は膨大で、中国はそれに大きく及ばない。西側が制限している先端技術や融資を中国から入手することも難しい。中国自身、先端技術の輸入を制限されている上に、中国の銀行はロシアに融資してアメリカから制裁を食らうことを何よりも恐れているからだ。

これまで中国にとってロシアは対米関係で使いでのあるパートナーだったが、今はもっぱらお荷物になった。中国がロシアに兵器を渡すなどして助けると、アメリカとその同盟国に手痛い制裁を食らう。

中国はウクライナ戦争の停戦案なるものを示してはいる。しかしこれは、毒にも薬にもならない原則を並べただけのもの。クリミアの扱い、ウクライナ東部での停戦ラインなど最も重要なことに触れていない。戦争の一方の当事国ロシアだけを訪問する言い訳の道具でしかない。中国はウクライナに軍事技術のかなりを頼っていて、ウクライナを怒らせるような調停はできない。

習近平の訪ロは国際政治とウクライナ戦争に新局面をもたらすものとはなるまい。「中国が上、ロシアが下」という新時代を世界史に刻み付けて終わるだろう。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国発ECシーイン、インドで生産強化 1年以内の海

ワールド

中国、全ての大病院で無痛分娩提供へ 「出産しやすい

ビジネス

中国自動車販売、5月は4カ月連続で増加 伸びは鈍化

ワールド

イラン、核協議で米国に対案提示へ 制裁解除の保証要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 6
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story