コラム

デジタル人民元は中国停滞の始まり

2021年06月08日(火)16時00分

国際政治でも、中国は孤立の方向にある。中国と準同盟関係を結んでアメリカと対抗してきたはずのロシアのプーチン大統領は、バイデン米大統領に会おうと言われて喜々として応じる始末。習近平(シー・チンピン)国家主席は慌てて5月下旬に側近の楊潔篪(ヤン・チエチー)政治局員をモスクワに差し向けた(プーチンは黒海の保養地ソチにいて会えなかったが)。

そうしたなかで2020年の国勢調査は、2016年に1人っ子政策を改めて2人目の出産を容認したにもかかわらず、人口の伸びがさらに低下していることを示した。統制もここまでは及ばず、中国の人口は当局の予想より早く、来年頃にはもう減少を始めるかもしれない。

7月1日、中国は共産党創建100周年を盛大に祝う。そして来年2月には、北京で冬季五輪を挙行する。少なくともそれまでは、台湾に侵攻するような行動は慎まないといけないのだ。しかし、そうやって自縄自縛でいるうちに、中国の退潮は誰の目にも見えるようになっているかもしれない。

中央統制も、子を増やすことはできない。そして統制が過ぎれば、経済は窒息する。デジタルマネーはその象徴で、長期停滞への餞別になることだろう。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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