コラム

ナワリヌイより注目すべき重要人物とは?

2021年01月29日(金)11時32分

剛腕ミシュスチンの下、さしもの新型コロナウイルス感染者数も曲線が下を向き始めた。ロシア製ワクチン「スプートニクV」をばかにしていた外国特派員も接種を始めているし、途上国からの引き合いもある。昨年春は一時マイナスの領域(売り手が買い手に代金を支払い商品を引き取ってもらう)にまで沈んだ原油価格も、1バレル=50ドル台にまで回復。それに呼応してモスクワ株式市場の株価は史上最高域にある。

この中で、ミシュスチンの支持率は上昇中だ。1999年のチェチェン独立紛争を武力で抑えた当時のプーチン首相ほどではないが、「コロナを克服した英雄」の効能書きで新政党を樹立し、総選挙を席巻するシナリオなのかもしれない。そしてその次は、エリツィンからプーチンへの禅譲にも似た大統領交代だ。

ただミシュスチンも、下僚を締め付けて期日までに結果を出させるのはうまいが、ロシア経済をどのように近代化するかについてはノーアイデア。化けの皮が剝がれて権力が真空化し、1990年代の悪夢の再現ということになれば、ナワリヌイにもまた芽が出てくることだろう。

<2021年2月2日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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