コラム

ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知られざるイギリスのビール事情

2025年07月05日(土)19時07分

さて、「ヤバい経済学(フリーコノミクス)」的な意味で、何年にもわたって僕を悩ませてきた疑問がある。言い換えるなら僕はそれを「解明」できないが、いくつか独自の理論は持っている。僕は、トレーダーとして数百万ドルを稼いだ(ゆえに市場を僕よりずっとよく分かっている)抜群に賢い友人にこの疑問を打ち明けてみた。そんな彼も途方に暮れた。

そこで僕の友人は、大手金融会社の「エコノミスト」である友達にその疑問をぶつけてみた。その彼は重要な洞察(ラガーとエールを飲む人々の年齢プロファイリングに関わるものだ)の詰まった説を即興で提示してくれたが、それでも根本的な欠陥があった。


僕がいったい何に頭を悩ませているかというと、つまり、イングランドではスーパーマーケットでラガーの方がエールよりかなり安いということだ。でもパブだと、それが逆転してラガーの方がエールよりも高く売られている。

例えばスーパーだと、クローネンブルグのようなおいしいラガーは、イングランドの良質なエールであるオールドスペックルドヘンよりも30%ほど安い。ところがパブだと逆転して40%ほど高くなる。

ラガーは缶でもボトルでも樽でも味がほとんど変わらないから、本当ならパブでラガーのほうが安いほうが道理にかなうと思う。反対にエールは、缶よりも樽の方がはるかにおいしい(ボトルは缶より微妙においしい)。だからパブで樽からつがれるエールの1杯には、製品として「付加価値」があるのだ。ラガーは価値が上がらないのに、なぜ値段が上がる?

道理にかなわない値段設定

そのうえ、エールのほうが保存が難しい。ラガーより安定していないので、樽の中で酸味が出ることがある。たまに、エールを1パイント注文して一口飲むや、店員にこれを捨てて取り替えてくれと頼まなければならないことがある。こんな調子で、パブは購入したエールのおそらく5%ほどを無駄にしているのではないか。

一方で、ラガーは基本的に味が落ちることはない。こうしたコストをカバーするためには、エールの価格のほうが高くなるはずと考えるのが普通だろう。

結局、僕には突き止められない謎なので、僕の中途半端な理論で読者を退屈させるわけにはいかない。何らかの論理や要因の組み合わせがあるはずだが、僕の理解を超えている。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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