コラム

ロックダウンによる「成績インフレ」で格差が固定化する

2020年09月09日(水)18時20分

彼ら若者は、自分がエリートの達成者であり、高収入で楽しい仕事を得るチャンスを「自らの努力で獲得した」と信じさせられるようになる。だが実際のところ、彼らが高額の借金を背負い学費を払って得た優秀な成績は、周りの多くの仲間たちと代わり映えしない。彼らは大卒未満の人々に比べれば仕事に就ける可能性が高いかもしれないが、1世代前なら大卒か大卒でないかに関わらず、賢い50%の人なら賢くない50%の人より就職できる可能性は高かっただろう。彼らは少し多く給料をもらっているかもしれないが、それでも同じこと。賢い上位半分は、どんな状況でも下位半分よりは稼ぐ可能性が高いまでだ。

教育は何十年もの間、格差を打ち破る社会的流動性の原動力だった。労働者階級の子供がいい大学に入ってちゃんとした成績を収めるのは容易ではなかったが、もしやり遂げれば、キャリアの可能性は大きく開けた。

だが何百、何千人もの大卒者が仕事に応募してきて、彼らがそろいもそろって同じように成績「優秀」という状況では、雇用者側はきれいなアクセントと洗練された身のこなしの上流っぽい子を選びたくなるだろう(もちろん無意識の偏見だ)。メディアやPR、ファッションなど若者に人気のクリエーティブな業界ではインターンシップ経験者を採用することが多く、そのインターンシップは大抵、能力より親の「コネ」がものをいう。

だから、今年の素晴らしいAレベル試験の結果は、より多くの若者が大学に進むことを意味する。彼らのほとんどが「最高」かその次の「2:1」の成績で大学を卒業するのは確実だろう。そして、大卒者にふさわしい収入の仕事に就ける人は、いつにもまして少なくなることだろう。

<本誌2020年9月15日号掲載>

<関連記事:僕のイギリスの母校はなぜ教育格差を覆せたのか
<関連記事:ロンドンより東京の方が、新型コロナ拡大の条件は揃っているはずだった

20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前のドルは159円後半で売買交錯、見極め続く イ

ビジネス

実質消費支出、2月は3カ月連続マイナス 中東紛争で

ワールド

26年銅市場は供給過剰の見通し、米ゴールドマンが価

ワールド

米国の外国船内航海運認める措置、国内燃料供給に寄与
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story