コラム

ホンダ英国工場撤退で大騒ぎの不思議

2019年02月23日(土)17時20分

おかしいことだが、僕がイギリス人の製造業偏重の姿勢に気づいたのは、日本に住んでいたからだ。日本で僕は、農業に対する似たような偏重の姿勢に驚いた。僕はよく聞かされたものだ。農家は感謝されて当たり前の存在だ、農家は輸入関税によって保護される必要がある、農家がやっていけなくなったら悲劇になる、彼らは大変な重労働をしてくれている......。言うなれば東京のサラリーマンが毎日2時間かけて通勤し、10時間も働いているのに、なぜ農家だけが優遇措置を受けるべきなのか、僕にはさっぱり分からなかった(ついでに言えば東京のサラリーマンは、農家がこんなにも保護されているために農産物に必要以上のカネを払っている)。

そして今、いつになく雇用が好調なこの国で新しい仕事を探さなきゃいけないことを、2年以上も猶予を持って知らされたスウィンドンの3500人の労働者たちが、こんなにも国民の同情を集めていることが、僕にはさっぱり分からない。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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