コラム

悪徳家電販売店、だますほうが悪い? だまされるほうが悪い?

2017年11月10日(金)15時40分

ミリバンド氏の番組にも、そういう賢くない買い物をしてしまった人が匿名で出演していた。彼は、本当なら買えるはずもないほどの高額で商品を買ってしまったことに困惑していた。でも、彼のような人は決して珍しくないから、そんなに自分を責める必要もないと思う。<このコラムの関連記事>それに、これは、低所得の人たちに限ったことではない。

今週僕は、イギリス人の成人は平均して8000ポンドの「無担保」債務を抱えているという記事を読んだ。無担保の債務は(住宅ローンなど担保のある債務とは違い)、そのほとんどは個人ローンやクレジットカードの債務で、利率は5~21%だ。これはかなりの額だし、この負債から生じる利子も相当なものだろう。

教育のある恵まれた人たちでも、時には金融知識があまりにお粗末で驚かされることがある。僕だって専門家ではないが、複利とか、投資利益率、実質収益などごく基本的な事柄をしばしば人に説明してやる羽目になることがある。複利についていえば、1%の利率の違いは1年ではたいして大きな違いではないとだけ考えがちで、それが25年たったらものすごい違いになるということをなかなか見通せないものだ。

実質収益という概念も、いくら説明しても分かってもらえないものの1つだろう(インフレ率が4%だったら、3%の利率はちっともよくないということをなかなか理解できない)。

実は、このあまりにも重要で、あまりにもシンプルな原則をどうしても分からせてやりたい人が一人いる。21歳の若かりしときの僕だ。

*追記:このブログを書いた翌日、僕は大通りを歩いていて問題のチェーン店の前を通ってみた。まさにその窓には、ミリバンドが番組内で「暴露した」のと同じ内容の表示がちゃんと掲げられていた。年率69.99%、オプションでない標準サービスの金額、それに商品の最終的な「総額」(僕に言わせれば「過払い額」)。つまり、店側がどんなに反道徳的に見えようとも、実際の金額を小さな字でごまかして「安い週払い金額」だけをでかでかと掲げて客をだましている、などとは決して非難できないということだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 原油高受けたインフレ圧力

ワールド

トランプ氏訪中、中国が延期で合意 早期に再調整=ホ

ワールド

NATO、ホルムズ海峡再開を協議 ルッテ事務総長「

ワールド

IAEA、イラン中部の新ウラン濃縮施設の状況把握せ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story