コラム

NATOの終わりの始まり? トランプ政権は欧州を「敵」認定して分断しようとしているのか

2026年01月20日(火)15時25分

アメリカがロシアとウクライナと手を結び、EUと中国と対抗?

この問いに筆者は「トランプ政権の中には、EU分断戦略を進めたい人がいる可能性が大変高い」と答えたい。

根拠は、昨年12月下旬にウォロディミル・ゼレンスキー大統領が発表した、アメリカとウクライナによる和平案20項目の草案である。

その中に驚くべき内容が含まれていた。10番目に「ウクライナはアメリカとの自由貿易協定締結のプロセスを加速させる」とあったのだ。「ロシアにも同様の条件を提示する」とも書かれていた。このような内容が言及されるのは初めてだと思う。しかも7番目には、今までのウクライナの希望どおり「ウクライナは特定の日付にEU加盟国となる」とあった。

この二つは両立しない。もしウクライナが先にEU加盟国になるのなら、貿易協定を結ぶ主権はなくなりEUに譲渡されるため、単独でアメリカと貿易協定は結べない。もしアメリカと先に貿易協定を結ぶのなら、EUに加盟したときにアメリカとの協定を精算しなくてはならない。

前例がある。冷戦が終わって東欧やバルトの国々がEUに加盟したとき、各国がロシア等と結んでいた条約をすべて見直したのだ。EU全体の決まりの中に事実上引き継いだものもあれば、形を変えたもの、廃止されたものもある。

これはどういう意味だろうか。トランプ政権の中には、従来のアメリカ+欧州 VS 旧ソ連の共産主義国という構図ではなく、ロシアやウクライナ、旧ソ連の国々を自国の経済圏に入れようと戦略を練る人がいるように見える。EU・欧州と対立を辞さず、むしろ邪魔であると敵視していることになる。

このことは別の重要な意味を持つ。旧ソ連の国々は、圧倒的に中国の影響力が大きい。ロシアとウクライナを取り込む戦略は、対中国という意味でアメリカの利益にかなう。EUや欧州と手を取って中国と対抗しようというのではない。旧ソ連の中ではコーカサス地方はEUの影響力が強いが、これもアメリカにとっては邪魔とみなされる可能性がある。

このため、「2026年は今まで以上に注意深く米と欧の関係をウオッチしなければ」と思っていたところ、まさかの事態がグリーンランド関連で起きた。もしトランプ政権がEUを敵認定しているのなら、実はもう一つ重要なファクターがある。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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